第4章 第8話「4th Duel:撃ち落とされた夢」



蒼穹の下、静まり返った決闘空域。

ZAIN-01の足元に、硬質な着地音が響く。佑真の呼吸が密閉されたコックピットの中で、浅く、速くなっていた。


「……田中皇海。あいつが……」


正面、青と白に彩られた近接型AC《グランゼム・ドラン》が静止していた。背部に二基の高出力ブースター、両腕には煌々と光を放つ光学剣――異様な殺気を纏っている。


「よう、佑真。まだヘタレ面してんじゃねぇだろうな」


通信が開かれた。声は歪んだまま、あの頃と同じ嘲笑の響き。


「お前が“戦争止める”だ? 笑わせるよ。あの時、誰一人守れなかったくせによ」


佑真の指が、操縦桿を強く握り締めた。


(……あのとき、俺は……怖くて……)


モニターの片隅には、スレッドゼロの仲間たちが見守っている姿が映る。

総士は無言で画面を睨みつけ、綾杜は腕を組み、裕太は固唾を飲んでいた。


「行くぞ、佑真ァア!!」


通信が切れるより早く、皇海のグランゼム・ドランが動いた。

両の光剣を交差し、滑るように間合いを詰めてくる。


高速接近――!


「ッ!」


佑真は即座に右腕を振り上げる。

ZNソードが皇海の左の光剣を受け止め、火花が散る。が、同時に──


ブシュン!!


皇海の頭部から繰り出されたバルカン弾がZAIN‐01の左肩装甲に突き刺さる。


《損傷:左肩ユニット破壊。》


機体が仰け反る。衝撃で姿勢制御が一瞬失われた。


「動きが鈍ェぞ、佑真ぁ!」


皇海は更に左の光剣で下段から切り上げる。ZAIN‐01はブースターで後方に飛び退くが、切っ先が脚部スカートをかすめ、装甲片が空に舞った。


「ビビってんのかよ? お前、やっぱり……昔から何も変わってねぇな」


佑真は息を呑んだ。頭に響くのは、体育館裏で笑われた日々。

無言で睨み返した視線の奥――まだ、心の奥底に「恐れ」が残っていた。


(……違う。俺は、戦うって決めたんだ……!)


だが、その決意はまだ曇っている。皇海はそれを見抜き、追撃の構えを取る。


両の光剣が、再び赤く輝きを増していた。


佑真、静かに深く息を吐く。


「……俺は……逃げない……!」




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