第4章 第4話「1st Duel:爆ぜる信念」



「――甘いよ、裕太くん」


次の瞬間、バルテウスの巨体が唸るように突進してきた。


重量級の質量そのままに、SYLPHID‐04の機体が跳ね飛ばされ、

爆風と衝撃で左脚部が吹き飛んだ。


「う、ぐっ……!」


警報が響く。画面が赤く染まり、機体が傾く。

地面を滑り、鉄と砂利が軋む音が機体内に伝わる。


《脚部装甲:破損。機動制御不能。回避不可能》


(……また、か)


動けない。

また、俺は……何もできないのか?


頭の中に、前回のRAHVAN戦の記憶がよぎる。


あの時、自分だけが何もできなかった。

また……繰り返すのか?


――違う。


「……俺は、もう逃げねぇ……!」


裕太は震える手で、照準を定めた。


視界には、勝利を確信して正面から迫ってくるバルテウスの姿。


「寧々……お前を、撃ち落とす!」


右腕のバズーカが、静かに上を向いた。


(見える。今なら――届く)


HUDの照準が、バルテウスの胸部エネルギーコアにピタリと重なる。


引き金を――引いた。


一拍の沈黙ののち。


爆音と閃光が、雪原に広がった。


「なっ――!?」


寧々の叫びと共に、バルテウスの装甲が弾ける。

胸部のコアが直撃を受け、装甲を内側から破砕していく。


巨体が崩れ、炎と煙の中に倒れ込む。


「……やった、のか……」


裕太は肩で息をしながら、通信を開いた。


「寧々……」


通信の向こう、彼女はわずかに笑った。


「……そっか。やっと、ちゃんと目を見て、撃てたんだね」


「……ああ」


「……勝ち、だよ。裕太くん」


そのまま、サハクイ・バルテウスの通信は切れた。



《第一戦、スレッドゼロの勝利を確認》


司令塔からの無感情な通信が、静寂に響いた。


地上に倒れたSYLPHID‐04の機体が、ゆっくりと煙を上げていた。


だがその中で――

ようやく、“戦える自分”を取り戻した男が、そこにいた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る