第4章 第2話「宣戦、騎士の名のもとに」



焼津基地・作戦指令室。


大型通信モニターに映し出されたのは、軍服姿のロシア将校だった。

背後には、異様な存在感を放つ4機のACが整列している。


《我々はロシア主戦部隊所属“紅の牙”》

《先日のRAHVAN撃破により、お前たちの戦力は確認済みだ》


画面越しの将校は、形式的な口調を崩さず続ける。


《この戦争において、誇りをもって敵を認める。そして今回、正式な“決闘”を申し込む》


「決闘……?」

佑真が目を細める。


《ルールは単純。我々4機と貴様ら4機で1対1の個別戦闘を行う。

勝敗の条件は、片方が完全破壊されるか、自発的降伏》


《勝者はその戦闘区域の支配権を得る。敗者はACを放棄し、投降すること》


司令室がざわつく。


「……何を急に騎士道みたいなことを」

裕太が苦々しく呟いた。


だが、総士は冷静に判断していた。


「おそらく、RAHVANの件で、こちらを“同格”と見たんだ。

ならば――名誉を賭けた、四騎士との決闘……というわけか」


赤沼梓が腕を組んで言う。


「舐めてないのはわかる。でも、本気ってことよ。あの4機、全部化け物」


総士は静かにうなずき、やがて振り返った。


「……受けよう」


「え?」

佑真が言葉を飲む。


「受けて、勝つ。それしかねぇだろ」

総士の言葉に、綾杜が頷く。


「逃げたら、“対等”じゃなくなる。俺はやる」


裕太も、一拍の沈黙の後で言った。


「……この前の借り、返させてもらう」


佑真は、全員の目を見て、最後に言った。


「わかった。やろう、四対四の決闘だ」



後日。

中立地帯に指定された戦闘区域長野・松本上空にて――


スレッドゼロの4機と、“紅の牙”と呼ばれるロシア精鋭AC部隊が対峙する。


それは、国家の威信と誇りを懸けた一騎討ち。

そしてこの戦いが、後に“白き死神”と“紫の眼”の名を世界に刻むこととなる――



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