第4章 第1話「揺らぐ視界」
焼津基地・医療棟。
修復中のVELTINE‐03と、損傷が大きいZAIN‐01が並ぶ格納エリアの隅で、裕太は一人、膝を抱えていた。
「……また、何もできなかった」
拳を握る。
前線で戦ったのは、佑真と総士。そして、半壊しながらも一撃を決めた綾杜だった。
SYLPHID‐04は――
敵の猛攻に、何もできずやられた。
レーダーに敵影は映っていた。
バズーカでかすめることすらできたはずだった。
でも。
「……俺、あのとき……動けなかった」
思い出すのは、RAHVANが綾杜に襲いかかった瞬間。
指がトリガーから外れていた。
身体が硬直して、モニターを睨むしかできなかった。
「俺、何しに戦ってるんだよ……!」
壁に拳を叩きつけた。
ドンッ、という鈍い音だけが響く。
「……何を怒鳴ってるんだ、大橋」
低い声が背後から聞こえた。
振り返ると、総士が立っていた。
「……別に。ほっといてくれよ」
「お前が一番、自分を許してないな」
その言葉が胸に突き刺さる。
「……なにも、できなかったんだよ」
裕太の声が震えていた。
「綾人が決めて、佑真が斬って、俺だけ……」
「そういう時もある」
総士は淡々と言う。
「戦場に立ってりゃ、全員が主役なんてことはない。ミスもしない奴なんて、もっといない」
「でも――」
裕太が口を開きかけたそのとき、
「だからこそ、生きてる奴は次を考えろ」
総士の言葉が止めを刺した。
「……総士」
「この戦争、まだ終わっちゃいない。次は、お前が誰かを救え」
言葉だけ残し、総士は去っていった。
しばらくその背中を見つめていた裕太は、目を伏せ、拳を強く握り直した。
「……次は絶対、俺の番だ」
心の奥で、小さな火がともった。
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