第3章 第10話「斬撃、雪を裂く」



雪嵐の中、激しく火花を散らす戦場。

【ZAIN‐01】と【NOESIS‐02】、わずか2機で挑むレイヴン級【RAHVAN‐Z3】。

しかし――


「速すぎる……!」

総士のライフルが追いつかない。照準を合わせた瞬間、RAHVANは視界から消える。


「クソッ……! どこに……!」

佑真も、反応速度が限界に近づいていた。


ZAIN‐01の右脚と左腕は既に損傷。

反応速度は落ち、視界はノイズで揺れる。


《佑真のバイタル、限界に近い。ZAINの稼働率、36%》

通信AIの声が冷たく告げる。


「まだ……終われねぇ……!」


だが、次の瞬間。

RAHVANが一気にZAINに詰め寄る。


刃が閃いた。


「――くる……っ!」


佑真が防御姿勢を取ろうとしたそのとき――


──ズドン。


遠くから一発の銃声が鳴り響いた。


RAHVANの動きが、一瞬だけ、止まる。


「……!? これは――」

脚部関節。そこに、狙撃弾が正確に突き刺さっていた。


《狙撃支援、確認》

HUDに映ったのは――


半壊したはずの【VELTINE‐03】。

その機体が、煙を吹きながらも高台から銃を構えていた。


「……立ってる、のか……!」

佑真の目が見開かれる。


「撃て、佑真……今しかない」

綾杜の声が通信に乗った。


あのクールな綾杜の声が、震えていた。


RAHVANの姿が、重く、ゆっくりと揺れる。


「――もらった!」


ZAIN‐01が全力で跳び出す。

損傷した右脚が軋み、左腕がぶら下がる。だが、その身で――


《ZNソード、最大出力》


重力を切り裂き、佑真はRAHVANの胴体へ斬撃を放つ。


刃が鋼鉄を割り、衝撃波と共に機体が崩れ落ちる。


RAHVANの巨体が、雪を撒き散らしながら沈んでいった。


静寂。

戦場に、風の音だけが戻った。


「……終わった、のか」

佑真は膝をつき、剣を地に突き立てた。


「……助けられたな」

総士の機体が隣に着地する。


「……ああ。綾人がいなかったら、やられてた」


綾杜の機体は、遠くで火花を散らして動かなくなったが、

その狙撃は、確かにこの戦いを決めた。


雪が、ゆっくりと、すべてを覆っていった。




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