第3章 第4話「仲裁の名のもとに」
ジャングルの奥深く。
4機のACが静かに陣を張る。
「俺たち、ここで何やってんだろうな……」
裕太が呟く。
「“仲裁”だろ? つまり、敵も味方も殺さずに抑えろってこと」
綾杜が肩越しに答えた。
「でも、本当にできるのか?」
佑真が視線を落とす。
「できるかどうかはわからない。でも、やらなきゃ終わらない」
総士が低く言った。
*
その夜、キャンプファイヤーの灯りの下。
基地から送られてきた通信機器が、細かいノイズを出しながら作動している。
「両陣営から同時に“停戦協定”の連絡が来た」
静馬の声が無線から届く。
「だが、どちらもこちらに不信感を隠していない。協力は名目だけだ」
「じゃあ……俺たちは利用されてるだけじゃないか」
佑真が拳を握り締める。
「そうかもしれない。でも、無力に立ち尽くすわけにはいかない」
綾杜が言葉を継いだ。
*
翌日。
フィリピン軍と黒海連合の間で、緊張した停戦会談が始まる。
スレッドゼロはその場に同行し、両者の監視を行うことになった。
「こっちが折れなければ、戦闘は続く」
総士が言った。
「俺たちは“誰の味方でもない”という立場でいなければならない」
佑真も続けた。
だが、会談は決裂寸前で、双方の銃口は互いに向けられたままだ。
「これが……現実だ」
スレッドゼロのメンバーは、それでも動かなければならなかった。
*
夕暮れ。
焼津基地に戻る通信機。
「今回の“仲裁”任務は、表面上は成功といえる。だが、根本的な問題は何も解決していない」
静馬は眉をひそめた。
「戦争は、単純な勝ち負けではない。複雑な利害が絡み合っている限り、俺たちの戦いも終わらない」
「……それでも、俺たちは進む」
佑真が静かに誓う。
闇の中に光を見出すために。
戦いは続く。
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