第3章 第2話「新たな色」
格納庫の空気は、火花と油の匂いに満ちていた。
大型リフトに載せられたパーツ群――それは、かつて北海道でスレッドゼロを追い詰めた、ロシア製対AC
「見事なまでにブッ壊れてたけど、素材は高性能。うちの子たちの補修にはちょうどいいのよ」
整備主任・赤沼梓が、口元をほころばせる。
「……皮肉なもんだな」
裕太が呟く。
「ぶっ壊された側なのに、その破片でまた立ち上がるなんてさ」
「でも、俺たちはやる。次は、負けないために」
綾杜が、静かに言葉を継いだ。
3機のACが、再構築されていく。
そして、それぞれが新たな“色”をまとう。
*
【VELTINE‐03】
漆黒を基調に、鈍く光る暗ピンクがラインとして走る。
破損した狙撃モジュールは新型に換装され、より正確かつ反応速度の速い狙撃が可能になっていた。
綾杜は静かに見上げる。
「……この色、悪くない」
「君には派手すぎるかと思ったけど」
赤沼が笑うと、綾杜は珍しく口元を緩めた。
「いや、ちょうどいい。闇に溶け込む毒って感じで」
*
【SYLPHID‐04】
これまでの白基調から一変し、艶やかな漆黒に、冷たい青の光が走る。
電子戦装備は強化され、撹乱能力が倍増していた。
「うおっ、めっちゃカッコよくなってる!」
裕太は両腕を挙げてはしゃぐ。
「まじで“夜の疾風”って感じじゃね? 俺、これ好きだわ」
「見た目に負けないように、ちゃんと動かせよ」
綾杜の一言に、「うるせぇ」と笑いながら返す。
*
【NOESIS‐02】
指揮官機にふさわしく、威厳ある黒に鋭い紫の縁取り。
制御系と索敵システムを新調し、指揮・支援性能はさらに洗練された。
総士は黙って機体を見上げる。
「いい色だな。冷静で、威圧的。……お前らしい」
佑真が隣でぽつりと言った。
「……お前も、派手になったもんだな。白に黄色なんて、まるで……」
「目立つヒーローみたいだろ?」
ふたりは、少しだけ笑った。
新たな色。それは、敗北の証でもあり、次なる決意の象徴でもあった。
この機体たちは、次の戦場へと向かう――
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