第3章 第1話「知られた名」
焼津基地、作戦司令室。
スクリーンには世界中の報道番組の映像が並んでいた。
「……正体不明のAC部隊が、日本北部での戦闘に武力介入。これにより、日露間の紛争は一時中断――」
「当該部隊は、“Thread Zero(スレッドゼロ)”と名乗っている模様です」
「なお、軍の一部では、該当勢力を“第3勢力”とみなす動きが……」
静馬は腕を組み、無言で映像を眺めていた。
その横で、総士が言う。
「……拡がったな。俺たちの名前」
「代償もな」
静馬は短く言う。
佑真は医療室から復帰したばかりで、未だ完全ではない。
綾杜と裕太も、整備班に詰めて修復中だ。
「でも、やらなきゃならない。世界は止まってくれないから」
総士の言葉に、静馬は画面を見たまま返す。
「次の依頼は、東南アジア。フィリピンと中国の間で衝突が起きている。制圧ではない。“仲裁”任務だ」
「仲裁……?」
「両軍とも、非公式にスレッドゼロの介入を警戒してる。ある種の“示威”としての出撃になる」
総士は頷いた。
「了解。俺たちで、戦場を変えてやる」
*
その頃、佑真は格納庫にいた。
整備中のZAIN‐01の白い装甲に、指先をそっと触れる。
「俺たち、もう後戻りできないんだな」
ZAINは、静かに沈黙していた。
その沈黙が、戦場の音よりも重く響いた。
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