第3章 第1話「知られた名」



焼津基地、作戦司令室。


スクリーンには世界中の報道番組の映像が並んでいた。


「……正体不明のAC部隊が、日本北部での戦闘に武力介入。これにより、日露間の紛争は一時中断――」


「当該部隊は、“Thread Zero(スレッドゼロ)”と名乗っている模様です」


「なお、軍の一部では、該当勢力を“第3勢力”とみなす動きが……」


静馬は腕を組み、無言で映像を眺めていた。

その横で、総士が言う。


「……拡がったな。俺たちの名前」


「代償もな」

静馬は短く言う。


佑真は医療室から復帰したばかりで、未だ完全ではない。


綾杜と裕太も、整備班に詰めて修復中だ。


「でも、やらなきゃならない。世界は止まってくれないから」


総士の言葉に、静馬は画面を見たまま返す。


「次の依頼は、東南アジア。フィリピンと中国の間で衝突が起きている。制圧ではない。“仲裁”任務だ」


「仲裁……?」


「両軍とも、非公式にスレッドゼロの介入を警戒してる。ある種の“示威”としての出撃になる」


総士は頷いた。


「了解。俺たちで、戦場を変えてやる」



その頃、佑真は格納庫にいた。

整備中のZAIN‐01の白い装甲に、指先をそっと触れる。


「俺たち、もう後戻りできないんだな」


ZAINは、静かに沈黙していた。


その沈黙が、戦場の音よりも重く響いた。



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