第2章 第10話「最初の勝利」
空気が、張り詰めていた。
超軽量機動型――“オーバーロード・ヴェルナー”が、獲物を狩る獣のように、雪原を滑る。
「来るぞ、佑真……!」
「わかってる――!」
ZAIN‐01が左右にステップを切る。数十発の高速射撃を浴びせるも、すべてを回避。
ヴェルナーはそのまま、ノンブーストで滑空するように突っ込んできた。
「こいつ……反応速度もおかしい……!」
それでも佑真は止まらなかった。
「俺たちは――ここで負けるわけにはいかない!」
ZAINが急上昇、ヴェルナーの死角に回る。
その動きに呼応するように、NOESIS‐02が正面から敵を引きつけ、ヘッドユニットに直接スモーク弾を撃ち込む。
「今だ、佑真!」
「――もらった!」
ZAINが旋回しながら、両腕の拳銃をフルバースト。
弾丸が敵の関節部に集中する。
だが、ヴェルナーは反撃してくる。
その動きが、目に見える。
(読める……こいつの軌道……!)
佑真は視線を逸らさない。
「右前脚、断裂……!」
総士の読み通り、ZAINの弾丸がヴェルナーの脚を貫いた。
「ッらぁあああああっ!!」
最後の弾丸が、ヴェルナーの頭部を撃ち抜いた瞬間――その機体は、崩れるように沈黙した。
静寂。
数秒ののち、ZAINとNOESISが並ぶ。
「……終わったな」
「……ああ、やっと、だ」
勝利の報告が、基地に届く。
しかし、それは“喜び”よりも“安堵”だった。
*
数時間後、焼津基地。
綾杜と裕太の機体は帰還不能。2人は軽傷ながら、担架で運ばれていた。
「生きてる……よかった」
ベッドに寝たままの佑真は、小さく呟く。
その言葉に、総士は短く返す。
「これが、最初の勝利だ。だが……ここが始まりでもある」
その言葉の意味を、誰よりも佑真は知っていた。
血と、汗と、叫びの先にあるもの。
それでも、自分たちは進むと決めた。
この戦いの名は――
スレッドゼロ、最初の勝利。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます