第2章 第7話「黒鉄の壁」



警報が鳴り響く。

焼津基地――その地下第3通信棟が、襲撃を受けていた。


「正面に大型AC2機、後方支援1機、全て重装甲タイプ!」


情報班の川瀬葵が、怒鳴るように通信を繋ぐ。


「敵部隊、識別確認! 日本軍所属・特務大隊黒鉄連所属機体!」


作戦司令室に詰める静馬が顔をしかめた。


「《黒鉄連》か……重装甲・重火力の怪物揃い。ここを潰す気だな」


スレッドゼロのメンバーに出撃命令が下る。


「ZAIN‐01は依然整備中。出撃はNOESIS‐02、VELTINE‐03、SYLPHID‐04の3機」

「敵戦力は高機動で押しきれない。正面突破は不可能――総士、お前が指揮を執れ」


「了解。迎撃作戦、展開する」


基地から離れた山林地帯、前線ポイント“YZ-17”。

3機のACが、雪の中に展開する。


「うわ、なんだよあれ……マジで動く要塞じゃん……」

裕太が前方の敵機を見て呻く。


視界の先にあるのは、全身が多層装甲で覆われた巨体――重装型AC《オーバーロード》。


「正面装甲、通常の4倍以上……綾杜、狙撃で抜けるか?」


「……正直、自信ない。でも、やるしかない」


綾杜が息を殺し、狙撃位置に移動する。


その瞬間、《オーバーロード》の肩部が開き、連装ミサイルが一斉発射された。


「ブースト回避!」


総士の指示で、3機が一斉に左右へ分かれる。

爆発。地面がえぐれ、煙が吹き上がる。


「こいつら、真っ向から押してくるつもりか!」


「やらせるかよ!」


SYLPHID‐04が飛び上がり、撹乱弾を投下。


「綾杜、撃てッ!」


狙撃音。だが弾丸は、装甲に弾かれる。


「無理だ……あの外装、まともに撃っても通らない……!」


「なら――崩すまでだ」


総士が拳を握った。


「この壁を抜かなきゃ、俺たちは前に進めない!」


戦いは始まったばかりだった。



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