第2章 第5話「暗雲」



焼津の夜は、いつになく静かだった。

基地の灯りが淡く揺れ、戦いの痕跡がそこかしこに残る。


「今回の襲撃……単なる模擬戦訓練の範囲を超えている」

諏訪部静馬が薄暗い作戦室でつぶやく。


「日本軍は我々を明確に“脅威”と認識し、実戦で叩き潰そうとしている」


望月圭が資料を前に言う。


「さらに、教育機関内部でも動きが活発化しています。教師たちが裏で……」


その言葉に、静馬の視線が鋭くなる。


「川上努、望月圭、小長谷清乃、森山春花、芳村賢治、小長谷大作、一坪皇……。彼らの計画はただの教育改革などではない」


「“スレッドゼロ”を潰すため、学校を舞台にした情報操作、攪乱工作も始まっている」


基地の壁に映る顔ぶれは、不気味なまでに冷徹だった。


一方、スレッドゼロのメンバーは疲弊していた。

綾杜は修復中のVELTINE‐03の横で黙々と狙撃練習を繰り返す。


「……私たち、どこまで耐えられるんだろう」


裕太は電子機器の故障を修理しながら呟く。


「けど、負けるわけにいかねぇんだよな。あいつらのためにも」


基地の片隅で、総士は孤独に地図を眺めていた。

戦況は悪化の一途をたどり、世界は確実に“暗雲”に覆われていた。


だが――


「俺たちは、ここで終わらせる」


静かな決意が、その部屋に満ちていた。



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