第2章 第3話「報復の兆し」



焼津演習場。

この日は、模擬戦訓練の予定だった。


「いいか、今回は連携重視。ZAIN抜きの3機編成で、再構築訓練だ」

総士の声が、格納庫に響く。


佑真は医療ベッドからモニターを見つめていた。

右肩と腹部には包帯。機体どころか歩くこともままならない。


「俺が……いけたら……」

悔しさを押し殺し、ただ仲間の無事を祈る。


演習場へと展開したのは、NOESIS‐02、VELTINE‐03、SYLPHID‐04の3機。

だがその時、管制に異常アラートが走った。


「高エネルギー反応! 不明ID、5機接近――!」


「模擬戦じゃねぇぞ! 緊急実戦――これは、襲撃だ!」


地上に閃光。

森を突き破って、5機のACが急襲してきた。国籍識別は――日本軍。


「嘘だろ……日本軍が俺たちを!?」


「武力介入の報復か……!」

総士の顔が険しくなる。


「綾杜、裕太! 応戦開始! 全ユニット、実弾仕様に切り替えろ!」


通信が一斉に切り替わる。

その瞬間、敵の一機がいきなりEMP弾を放ち、フィールドの通信網を部分遮断した。


「くっ……! 初手から指揮系統潰しに来てる……!」


敵の1機――“FURAKAWA‐MODEL”は中量級の高機動型。SYLPHID‐04へと突撃し、レーザーハルバードを振り下ろす。


「速ぇ……でもな、そんなもん、読めてんだよッ!」


裕太は即座に斜め上へブースト回避し、反転して撹乱ジャマーを散布。敵の照準が揺れる。


「こっちも一発お見舞いだぁあッ!」


EMPグレネードが命中し、敵の視界を奪う。


だが数が違う。


「3対5……不利すぎる」

綾杜が囁く。


「でも、道は作るよ。どんなに多くても、撃ち抜くだけ――」


VELTINE‐03が静かに移動し、狙撃ポジションを取る。

次の瞬間、敵の索敵ACの肩部レーダーが爆発する。


「……一機、無力化」


後方支援に徹する綾杜、前方を撹乱する裕太、そして――全体を統括する総士。


「全員、持ちこたえろ。ZAINがいない今、ここを落とされたら、拠点ごと終わる」


その言葉の中に、強い信念があった。


ここは戦場だ。

もはや、国家も秩序もない。

あるのは――信じられる仲間と、守る意志だけ。


スレッドゼロ、最大の危機が幕を開けた。




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