第2章 第2話「戦火に咲いたもの」
雪は、なおも降り続けていた。
燃え落ちたハシュマルの残骸が蒸気を上げ、周囲の雪を黒く染めている。
その中心に――ZAIN‐01が、膝をついていた。
動かない。
通信も、応答がない。
「……佑真……」
総士の声が、かすれた。
「ZAINのバイタル、取れない……熱源も不安定だ……!」
綾杜の報告に、全員が沈黙する。
その時――
「俺、行くわ」
SYLPHID‐04が地上に降下し、コックピットを開いた裕太が駆け出した。
「待て裕太! お前……!」
「いいから! 俺、あいつの顔、見てくる!」
吹雪の中、白く染まったZAINの装甲に駆け寄る裕太。
「佑真! 聞こえるか!? 俺だ、大橋だ! 起きろよ、マジで!」
その叫びは、冷たい風にさらわれた。
機体の外装は破損し、ブレードは折れ、片脚は機能を失っていた。
それでも――
「……うるせぇ……声デカいって……」
聞こえた。小さく、微かな声だった。
裕太の目が見開かれる。
「お、おい! お前、生きてんのかよ!?」
「……生きてるよ。ギリな」
そのまま、裕太は崩れるようにZAINの外装に寄りかかった。
「マジで……心臓止まるかと思ったじゃねぇか……っ!」
総士と綾杜も合流し、雪原の上に立ち尽くす。
「馬鹿が……なんで、あそこまで……」
「自分がやるしかないって、思ったんでしょ。あいつ、そういう奴だから」
静かに語る綾杜の目が、どこか誇らしげだった。
数分後、スレッドゼロ全機が現地制圧完了を報告。
空は、ようやく雪をやめていた。
*
翌日、焼津基地。
ZAINは修復作業に入った。右脚ユニットの全交換と、主動力炉の冷却系統再設計が必要だ。
医療室では、佑真が眠っていた。
窓の外、遠くの山に雪が積もっている。
ドアが開き、総士が無言で入ってくる。
そして、ベッドの傍らに置かれた小さなストラップ――あの日、川瀬葵から渡された“お守り”を見つけた。
それは、ZAINの肩の素材でできた、小さな剣。
雪の中で、生き残った“希望”の形だった。
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