第2章 第1話「雪の牙、鋼の意志」
警報音が、ZAINのコックピットを満たしていた。
警告灯が赤く点滅し、右脚サーボは完全にダウン。センサー系も半数が死んでいた。
だが――まだ、動ける。
「……くそ……こんなんで……っ」
佑真は血の滲む唇を噛みしめ、操縦桿を握り直す。
目の前にそびえる“ハシュマル”。
空中を滑るように移動し、ミサイルベイを再展開。確実に、ZAINを仕留めにきていた。
「佑真! もう退け! 今のお前じゃ無理だ!」
総士の叫び。
「こっちで制圧する! お前は下がれって!」
裕太も声を荒げる。
だが、佑真は首を振った。
「俺が……やらなきゃいけないんだ」
「この怪物を、誰かが止めなきゃ……!」
その瞬間だった。
「狙撃、いくよ」
綾杜の声。静かだが、決意に満ちていた。
遠距離から、VELTINE‐03の対装甲ライフルが火を吹く。
銃弾がハシュマルの主翼をかすめ、機体がわずかにブレる。
その隙を、ZAINは逃さなかった。
脚部の故障を補うようにブースターを吹かし、地を這うように接近。
左腕のブレードを捨て、右腕に全エネルギーを集中する。
「――いけえええええッ!!」
ZAINの右腕が、ハシュマルの腹部に突き立つ。
火花と爆風。だが、装甲は抜けない。
「……くっそぉぉぉぉ!!」
刃が軋む。金属が悲鳴を上げる。
その時、上空からSYLPHID‐04のEMPジャマー弾が降り注ぐ。
「止まれぇぇええええッ!!」
裕太の叫びとともに、ハシュマルのブースターが一瞬失速する。
その刹那、ZAINの刃が深く、深く――突き刺さった。
爆発。
ハシュマルの機体が軋み、火を吹き、ついにその巨体を崩す。
「やった……やった……!」
通信がざわめく中、佑真の視界は真っ白になった。
コックピット内に煙が立ちこめ、システムが強制シャットダウンしていく。
「……目標、沈黙」
綾杜の声が静かに響いた。
雪が降っていた。白い大地に、黒煙と、倒れた白のZAIN。
その姿は、まるで鋼の意志そのものだった。
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