第四章
第42話 好きバレした風花
教室がざわめいた。
見方によれば公開告白のようなものだから、そうなるのは当然なのだが――。
俺は周囲からさまざまな目線で見られて辛い。
暖かいものだけでなく、男子からはなんでアイツがという、女子からはなんで応えてあげないのという視線を浴びている。
目を合わせないように、ただ前を向こうとしたのだが、落ち着かない。
多分、風花の顔は得意げなのだろう。
/ / / / /
午前の授業が終わって、昼休みになった。
朝ぶりに風花が俺のところへとやって来た。
すごく見守られている気がする。
俺の机の周りにいたクラスメイトたちは、そそくさと少し離れたところに移動した。
俺と風花の空間をつくっててあげよう、という雰囲気を感じる。
「昼食、一緒に食べるよね」
風花は手に持っている弁当箱を掲げた。
「あぁ」
俺は軽く返事をして、夏実も一緒にかと思い、横の方を見遣ったのだが、すでにいなくなっていた。
いや、いるのはいるのだけれど、教室の端からうんうん――と頷きながら俺たちを見ている。
風花もそれに気づいているようだったが、何も言わずに、俺の隣にイスを持ってきて座った。
「隣……?」
「そう、隣。こっちの方が近づけれるでしょ」
風花は隠す気がなく、教室の半分くらいには聞こえるであろう声量で言った。
確かに、イチャイチャしてるカップルは、向かい合わせでなく、隣同士ベタっとくっついているイメージがある。
そういうことなのか――?
そんなことを考えながら、俺はパンを取り出して食べ始めた。
箸を持っている右腕が、風花にぶつかってしまう。
食べにくいし、風花も大丈夫かな――と思って、右側にいる風花の顔を見た。
「どうしたの?」
「いやぁ、腕が当たっちゃってるからさ……」
「そんなこと、わざわざ気にするなって。わたしと晴路の仲でしょ」
少し余計なことを付け加える風花に、俺は抗議の目線を向ける。
しかし意味が伝わらなかったのか、風花は弁当箱から卵焼きを一つ取って、俺の方へと差し出してきた。
「はい、あー――」
口を開けろと催促されると、開けるしかない。
俺は一口で、その卵焼きにかぶりついた。
その瞬間、口の中には甘い味が広まる。
「晴路、どう?」
「んー……」
美味しいと伝えようと思ったのだが、風花は一向に箸を抜いてくれない。
俺は頭を動かしそうとした。
しかし、背後からシャッター音が一つ、二つと聞こえてきた。
目の前にこんなのがいたら撮ってしまう心理は、分からなくはない。
風花はその音を聞いてなのか、ニカっと笑った。
そしてやっと箸を離してくれた。
「美味しい?」
「美味しいよ、すごく」
「ほんと? 嬉しい。いつも卵焼きだけは、わたしが作るんだ」
「へぇー、すごいね」
ありきたりな返答をしてしまったが、これが風花の作る料理の味……。
そう思うと、なんだかより一層美味しく感じる。
…………。
それぞれ食べていっている途中、何かを思い出したかのように、風花は俺の方を向いた。
「そうだ――。放課後、わたしの家に来て。話したいことがある」
なにを話すのかと気になったけれど、多分、今日の朝のアレについてのことだろう。
「俺も、聞きたいことがある」
「じゃあ、一緒に帰ろうね。今日は新聞部ないでしょ」
「あぁ」
風花が新聞部の活動日を覚えていることに、違和感を感じないようになっていた。
放課後――。
俺と風花は隣同士で歩き、風花の家へと向かう。
夏実は用事があるからといって、学校に残った。
俺たちのためなのかも知れないが、真相は分からない。
「周りからすごく見られている気がする」
風花は俺にそう言った。
その通りで、歩いている生徒のほとんどが、俺と風花の方をチラチラと見てくる。
あれが噂の……とか、言われているような気がする。
「そりゃあな。風花があんなこと……いや、なんでもない――」
風花に真意を問いたくなったが、今から風花の家に行くのだ。
だから俺は言うのをやめた。
「わたしは間違ってたとは思わないよ?」
「――――」
風花は言い放ったから、俺は反論する気になれない。
それは、俺が正しいと思ってしまったからでもあるだろう。
そこから会話は少なくなって、電車に乗り、風花の家へとついたのだった。
= = = = =
◇あとがき
お久しぶりです。
長らくお待たせしてしまい、申し訳ないです。
今日から毎日投稿していきます。
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