仕返しでいちばん風が強い!

「……ひなちゃん、こっち向いて?」


ベッドの上、かすかな明かりだけが差し込む部屋のなか。

風の声は、まるで耳の奥に直接届くみたいに、甘くてやさしい。


「や……恥ずかしい」


ひなは頬を赤らめながらも、ゆっくりと顔を向けた。

その瞳には、戸惑いと、そして――確かな「好き」が宿っていた。


「全部、見せて。触れて。ひなちゃんのこと、もっと知りたい」


「……風、ほんとに本気?」


「うん。全部、ひなちゃんが好き。心も、身体も、全部。」


その言葉が降ってくるだけで、胸の奥がジンと熱くなって、

ひなはふるえる唇で、そっと言った。


「わたしも……風の全部が、欲しい」


静かに、ふたりの距離がなくなっていく。

肌がふれて、手が重なって、唇がまた合わさる。


「ふう……っ」


小さな声がこぼれる。

風の指が、シャツのボタンをそっと外していくたびに、ひなの鼓動がどんどん速くなっていく。


「すごい、かわいい……ひなちゃん、やっぱり可愛すぎる」


「やだ、言わないで……」


「言いたくなるくらい、好きなの」


そのまま、何度も何度も、風の唇がひなの肌に落ちる。

優しく、丁寧に、どこまでも甘く。


「風、っ、そんなに……したら……」


「泣いちゃうくらい、感じて? ……お願い」


「ん、ぅ……あっ……風、わたし……」


身体がびくびくって震えて、思わず、涙がぽろっとこぼれた。


「え、泣いてるの?」


「っ……ごめん……なんか、からだが、勝手に……でも、嫌じゃないの、怖くもないの……」


「ひなちゃん……」


風はその涙を、そっとキスで受け止めるように拭った。


「泣いていいよ。可愛い。……好きで泣いてくれるの、嬉しいよ」


「こんな、見られたくなかったのに……うぅ……」


「でも全部、わたしが見るの。ひなちゃんのこと、全部受け止めたいの」


ふたりはそのまま、朝になるまで離れなかった。

たくさん触れ合って、名前を何度も呼び合って、

まるで何度も恋に落ちるみたいに。



「風……」


「なに?」


「ねえ、あの……ちょっと……その、途中で……」


「ん?」


「……でちゃった、かも。わたし……」


「……え?」


「その、いちばん……気持ちよくなった時に……少しだけ、たぶん……」


沈黙。

でも次の瞬間、風は――ぷるぷる震えて、口元を押さえて、

「……可愛すぎるっっ!!!!」って叫んだ。


「や、やめて! 言わないでぇぇぇ!!」


「そんなの、完全に、わたしの負け! ひなちゃん、世界一えっちで可愛い!!」


「うぅぅぅう〜〜〜〜!!風のばか〜〜〜〜っ!!!」


でもその泣きそうな声の裏で、ひなはちょっとだけ笑っていた。


「だいすき、風」


「……わたしも。もう絶対、ぜったい離さないから」


ふたりの手は、朝の光のなかで、まだぎゅっと握られたままだった。

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