トイレでいちばん君がラッキー!

「……やばい、ほんとに、やばい」


風は学校帰り、足をすり合わせながら、必死に我慢していた。

教室を出たあたりからずっと、トイレに行くタイミングを逃し続けていて。

もう限界寸前だった。


(ひなちゃんには……言えない……)


昨夜、あんなふうにすごしたばかりなのに、

今さら“おしっこ漏れそう”なんて恥ずかしくて言えるわけがない。


――やっと、玄関の鍵を開けて、靴を脱ぐ。


「ひなちゃん、ちょっと先に行っててっ!」


一目散にトイレへ駆け込む。

ドアを閉める。だけど、鍵を――


カチッとはいってなかった。



「風?」


トイレの前で小さく声をかけた。


返事がない。

なぜか気になって、私はそっとドアを押した。


――カチャ。


「……っえええええええええええええええっっ!!!」


座っていた。

制服のスカートをまくり、ショーツをずらして、

そこから……ちょろちょろ、と音を立てながら、

黄色の半透明な音が、白い便器に注がれていた。


風の体が硬直する。


「み、見ないで……っ!! ひなちゃんっ!! や、やだ……っ!」


頬は真っ赤で、両手で顔を覆っても、足は閉じられなくて。

出始めたものは止まらなくて。

私の目は、釘付けになったまま、見てしまっていた。



「……全部、見たでしょ」


その夜、風はうつ伏せになってベッドに頬を沈めていた。


「……ごめん」


「すっごく、恥ずかしかった」


「……うん、ごめん」


「じゃあ、お仕置きしないと」


「え?」


風がゆっくりと起き上がる。

目は潤んでるけど、口元は笑っていた。


「ひなちゃんが、全部見ちゃったから、今度はわたしが……全部、見せてもらう番だよ?」


「風、まさか……」


「仕返し、するから。覚悟して?」


そっと、風の指が私のシャツのボタンにふれる。

ひとつ、ふたつ、外れていく。

恥ずかしいのはこっちのはずなのに、

風はその瞳で、全部を見ようとしていた。


「ひなちゃん、わたしのこと見てた時、どんな気持ちだった?」


「……風が、可愛くて、えっちで、ちょっと……すごく好きって思った」


「じゃあ、わたしにも同じ気持ち、させて?」


制服のまま、肌に触れ合っていく。

あのとき見せてしまったすべてが、

今度はふたりの愛の引き金になって、火がついていく。


「好きって気持ち、止まらないから……もう、全部あげるね」


「うん……全部、受け止める」


ふたりの呼吸が重なって、

音も、匂いも、熱も、何もかもがまざりあった。


恥ずかしさの先にあったのは、

限界を越えてなお、まだ深く愛せることだった――。

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