第七章:真実の民

群衆の視線を受けながら、

王は静かに群衆へ向きなおり、語り始めました。


「私が……裸に見える者は、恐れずに名乗り出るがよい。

 そして、私と共に城へ来てほしい――

 真実を語れる者の力を、私は必要としている」


その言葉に、民たちはざわめき始めました。

ですが、それは、恐怖のざわめきではありませんでした。


やがて、一人の老翁が、震える足取りで前に出ます。

「わたしには……王様が裸に見えます。

 けれど……そのお姿が、一番立派に思えました」


それに続いて、農夫が、織り子が、学者が、子を抱く母が、

次々と前に進み出てきました。


その列が次第に長くなっていくのを見て、大臣たちは顔をひきつらせました。

「ま、待て……何をしておる!

 軽率な真似は許されぬぞ! 陛下を愚弄する気か!」

「陛下の戯れだ! 本気にするでない!」

官僚たちも叫び、群衆を押しとどめようと騒ぎ始めました。


「黙れ!」

王の一声が、大地に響きます。


「この者たちは、誰よりも誠実に、真実を語っただけだ。

 その声を恐れ、ねじ伏せようとしてきたのは誰だ――?」


老従者が静かに言葉を添えました。

「欺瞞で築いた玉座は、今日限り、終わりを告げます。

 真実を語る者よ、王に続きなさい。

 王は、あなた方の声で、この国を新しく築き直したいと思っておられるのだ」


王は正直者たちの列を引き連れ、堂々と城へと戻って行きました。




その列を、かつて栄華をまとった大臣たちは、

青ざめた顔で見つめ、立ち尽くしていました。





続く~第八章へ~






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