第17話 戦闘と救出

「北条さん!下がって!」


「未可子!距離を取って援護してくれ!」


 俺が叫ぶと北条さんも未可子も頷いて行動を開始する。


「マヌスフォス!」


 俺は光の剣を発動させる。


『ぐるるるる…』


 魔獣は隙を窺うように左右行ったり来たりしている。


「悠介君!あれ!」


 俺の後ろにいる北条さんが悲鳴のような声をあげる。


「…っ!?」


 北条さんが指さす方向を見ると、そこには魔獣がさらに2頭姿を現していた。


 そのうち1頭は馬車に近付いていく。

 その馬車は牢屋のような形状になっていて中には数十人の人間が載せられていた。


「ちっ!未可子!グズグズしていられない!速攻で倒すぞ!」


「う…うん…でも…」


 俺の言葉に未可子が歯切れの悪い返事をする。


「どうした?」


「あそこで…人が…」


 未可子の視線を辿っていくと例の幹部の覆面男が木の上からこちらを見ている。

 幹部の目の前で魔法を使うのは憚られる…が。


「構うな!今は魔獣を倒すのが優先だ!」


「うん!…フランム!」


 未可子は頷くと同時に魔法を発動させる。炎は真っ直ぐに魔獣に襲いかかる。


『ぐぎゃぁ』


 魔獣が炎に怯み動きを止める。

 俺はそこに一歩踏み込んで魔獣の脳天に光の剣を突き刺す。


『ぐぎゃあああああぁぁ…』


 魔獣は断末魔の悲鳴をあげて倒れる。


「未可子!次だ!左の魔獣!」


 左側には今まさに馬車に襲いかかろうとしている魔獣の姿があった。


「馬車に近過ぎて魔法は使えないよ!」


 未可子が悲痛な声で叫ぶ。


「わかった!俺がやる!…マヌスフォス・ウォロ!」


 俺の手から放たれた光の剣は魔獣の脇腹に突き立ち光が弾ける。


『ぐぎゃあああああぁ』


 馬車を横倒しにした魔獣はその馬車に覆いかぶさるようにして倒れ、オーラが消える。


「あと一匹!」


 目で残りの一匹を探す。


「悠介君!後ろ!」


 北条さんの声に慌てて振り返る。

 音もなく背後に接近した魔獣が爪を振り上げていた。


「フランム!」


 真横から来た炎が魔獣を包みこむ。


『ぐぎゃぁあ』


 魔獣が地面に倒れ込む。しかしすぐに体勢を立て直そうとしている。


「マヌスフォス!」


 俺はすかさず光の剣を再び出現させてその首を狩る。


『ぐぉう…』


 胴体から切り離された魔獣の目は恨めしげにこちらを見たあと動かなくなった。



「やったね!悠介君!」


 北条さんが駆け寄ってくる。


 未可子は最初に倒した魔獣の骸を確認している。


 俺は木の上を見る。幹部の覆面男はいつの間にかいなくなっていた。

 ただ、俺と未可子の魔法はおそらく覆面男に見られただろう。…面倒な事にならないといいが…。


「鈴木君!とりあえず魔獣は全部死んでる」


「ありがとう。あとは…」


 3人で横転した馬車に近付く。


「何だ!?お前らは!」


 見張りの兵士が馬車に駆け寄ってくる。


「今はそんなことより救助だ!中の人を助け出そう!」


 見張りの兵士は少し迷いを見せるが頷いて馬車の牢屋の鍵を開ける。


「大丈夫か?」


 馬車の牢屋からは呻く声が聞こえる。


 兵士と協力して牢屋から中の人を引っ張りあげる。


 何人か救出したところで、救出した人たちと協力して牢屋の格子を破壊する。


 自力で動ける人は自分で牢屋から這い出してきた。


「ふぅ…助かったよ、ユウスケ…」


 聞き覚えのある声に振り向くとそこにはイザベラがいた。

 泥で汚れているが大きな怪我は無いようだ。


「イザベラ!?何でこんなところに?」


「うん。まぁ話せば長い。とにかく今は全員助け出そう」


 イザベラに言われて自力で動けない人を救助する。幸いな事に死人はいなかった。

 


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