第18話 仄かな温もり
仕事から帰宅後、事実を聞いた娘は、文字通り鞄を放り投げて、あずきの部屋に飛び込んだ。
「あずきちゃん、ただいま。お母さん帰ったよ」
意外にも、駆け込んだ勢いに反して、布団に横たえてやったあずきの前に膝を折った娘の言葉の始まりは静かだった。だが当然だが、その言葉に答えるいつもの鳴き声はない。
「あずきちゃん、ただいまってば!あずきちゃん、目を開けてこっち見て!お帰りのチューして!!」
何度も名前を呼ぶうちに、娘の声は、どんどん叫び声に近づきながら、決してあずきを揺すったり、叩いたりしなかった。ただただ、目を開けて、こっちを見て!!と、何度も繰り返し…
最後は、あずきを包むように腕を回し、まだほんのり温かい彼女のお腹に顔を埋めて。
ついに、娘は叫ぶように泣いた。
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