第11話 真夜中の恐怖。ドアを開けたのはだれ?
さて、すっかり『肩のり猫』になったあずきの、彼女らしいエピソードをもうひとつお伝えしよう。
この話をするにあたり、まずは先住猫のまめがドアを開けられるという事を知っておいてもらいたい。我が家は古い家で、基本的には障子などの引き戸が多いのだが、娘の部屋として増築した2階は洋室のため、90度下に回して開けるタイプのドアノブがついている。娘曰く『別に見られて困る物もない』とのことで、鍵をつけていないそのノブに、ジャンプで前足と体重をかけ、1発で開けてしまうのだ。いつからその技を取得したのか忘れてしまうほどに、私たち家族の中で、まめがドアを開ける事は日常的なことで、何の疑問もなかった。
あの夜までは…
それは、晩春か初夏か…とにかく暑くなる前の過ごしやすい気候の頃だったと思う。とある日の日付を跨いだ時刻、眠りに落ちるかどうかのぼんやりとした意識の中で、娘の部屋の方からドアノブを回す音が聞こえた。いつものように、まめが娘の部屋に入りたいのだな、と思ったのだが、その時はいつもとは違い、何度もドアノブを下げる音と、床に着地する足音が聞こえた。一定のリズムで繰り返されるその音に、さすがに目も覚め、いつものまめらしくない。何らかの理由で上手く開けられないのだろうか?と不思議に思っていると、一際大きくドアノブが回る、がこん!という音と着地音の後、娘の部屋から
「お化…けじゃない、きっちゃん!習得しちゃったの?!」
という、裏返った声が聞こえた。なんと、閉まっていたドアを開けて娘の部屋に侵入したのは、まめではなくあずきらしい。ベッドの中で動画でも見ていただろう娘は、繰り返す足音とドアノブが中途半端に動く様子を、固唾を飲んで見守っていたのだろう。何度目かのそれで入って来たお化け…ではなく、あずきに相当驚いたようだ。
当のあずきは、恐らく今までまめがやっていたのを見て、開け方の動作を覚えたはいいが、まだ体重が軽い彼女には、1発でドアを開ける、とはいかなかったらしい。
とまあ、こんな風に、日々何気なくまめの行動を見ているあずきは、発情期や遊んでほしいときなど、何か要求があるときはうまくまめを使いながら、毎日少しずつ変化成長していた。
それが、あんなことまで頼むとは…
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