第10話 構って満たして愛して!2

 あの一件からまめは、あずきの発情の度にマウントしたり、宥めるように毛繕いをするようになった。あずきの方もその優しさや、なんというか、‘心地良さ’が分かるようで、自ら彼に寄っていく事すらある。

 とはいえ発情期が終わってしまえば、初対面の時のように爪を出さずに頬や頭を叩いたり、廊下ですれ違うだけで不満げな声を上げることもあり、ちょっとした不良少女のようだった。

 また、もうひとつ変わった事がある。あるとき、発情期の「構って!」攻撃に辟易し、洗濯物を干しながら彼女をネックピローのごとく肩に乗せて、片手間にしっぽの付け根を叩いたところ、尻尾の付け根を叩いて欲しくなると、私が何をしていても、それこそ料理中でも、屈んでいても立っていても、後ろ足のバネを効かせて床から飛び上がり、自ら私の肩に乗るようになってしまった事だ。

 まるで蛇のように、尻尾まで使って首に巻きついてくるあずき。『重い、邪魔、肩凝りが酷い!』と文句を言う私に、あずきが肩にいることで目線が合わせやすくなったと喜ぶ反面、自分の肩には乗ってくれないと嫉妬する娘は呆れて鼻を鳴らした。


「じごーじとくー。自分で始めたんでしょ」

 

 まあ、そうなんだけど…。

 幸いあずきは、雌猫なこともあり3kgちょっとと、一見体重は然程ではないが、それでも首根っこあたりに5分も居座られては、結構な負担になる。その上、あずきはここに乗ると構ってもらえると覚えたのか、発情期が終わっても、私の肩に飛び乗っては頬に額をこすりつけ、鼻先を尻尾でくすぐってくるようになった。むず痒いやら鬱陶しいやら、とにかく安易に乗せてしまった自分を恨みつつ、私は今日も、リズムに合わせて「わん♩わん♩にゃん♩」とご満悦に鳴くあずきの尻尾の付け根を叩かされるのであった。

ちなみに、夏だろうと冬だろうと関係ない。なんなら入浴後の着替え時に脱衣所に侵入してきて、まだ服を着ていない背中に飛び乗ってくるこすらあった。無論背中は毛だらけ傷だらけ…私はてきと何て事を覚えさせてしまったんだと思った時には、後の祭りだ。

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