第2話
ある日、狼が巣に帰ると、花の姿がありません。一生懸命探しましたが、花の姿はなく、そこにあったのは、むしりとられた跡でした。
狼は巣を飛び出し、至る所を探しました。山の上や、洞窟の中、思い出の浜辺や湖のほとり。どこを探しても花の姿はありません。やがて疲れ果てた狼はそのまま眠ってしまいました。
目が覚めて、喉が渇いた狼が湖の水を飲みに行くと、横に何かがあるのに気づきました。それは昨日まで自分に微笑んでくれていた花の変わり果てた姿でした。
狼はそれ咥え、巣に持ち帰りました。
狼は生きる意味を見失い、変わり果てた花と一緒に、浜辺まできました。もうこのままいっそ身を投げてしまおう、とう思っていたその時でした、後ろから何やら音が聞こえてきました。
見に行ってみると、どうやらとあるハイエナが他の狼の花をむしり取ろうとしているではありませんか。その花に自分の花の姿を重ねた狼は、思わず飛びかかりました。ハイエナも必死で噛みつき、引っ掻き、激しい争いになりました。
やがて、花を諦めたハイエナはその場を去りました。狼は残された花を元の場所へ返しました。花を必死で探していた持ち主の狼は大層感謝をしました。お礼をしようと思いましたが、もうすでに狼の姿はそこにはありませんでした。
狼は浜辺へ来ていました。えぐられた内臓が痛みます、やっとのことで辿り着いた浜辺は亡くなったメスの狼、自分達の花、みんなで来た時と同じ、月の綺麗な夜でした。砂の上に横たわり、目を閉じると、波の音が遠くに聞こえます。その中には微かにあの時の、幸せだった頃の笑い声た混じっていたような気がしていたのでした。
月の浜辺の鎮魂歌 木沢 真流 @k1sh
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