第10話 暴走リンゴと最後の収穫戦線 前編
王都北部、果樹園地帯は壊滅寸前だった。
大地を揺るがす轟音。空を裂く赤い閃光。
木々は根こそぎ引き抜かれ、肥沃だった土は、ねじれた魔力で焼き焦がされていた。
中心にそびえ立つのは——紅果の
魔力で暴走したリンゴの木が異常進化し、ついには意思を持ち、自ら歩き出した存在。
その巨体は城門ほどもあり、果実は爆発的な魔力を蓄えている。
「うわあああ! りんごが飛んでくるぞーーっ!!」
「魔力干渉領域、完全崩壊! 結界、機能しません!!」
「これ以上は耐えきれません! 撤退許可を……!」
「まだだ!回復班、急げッ!」
現場は完全な戦場だった。
王国騎士団の魔法防御も通じず、魔導院の結界も容易く破られた。
そして——その戦場に、俺たちは飛び込んだ。
*
「ユウト様! あれが、リンゴの暴走体ですのね……!」
「やべぇ……完全に“果物”って次元じゃねぇな、あれは……!」
俺は腰の鎌を握り、スキル【収穫適期】を発動する。
……見えた。中心部、リンゴの幹の奥深くに、“一瞬だけ光る黄金のコア”が。
「クラリス。やるしかない。今回は、正面突破だ!」
「ええ、わたくしの新型ジョウロ“マークIII”も魔力過熱済みですわ!」
クラリスが背負っているのは、あのじょうろの進化版——《灼熱スプリンクラー・マークIII》
そして、俺の手には——新たな武器。
《農神の大鎌・烈果刃(レッカジン)加治屋名》。果樹特化、燃焼属性付与。
「いくぞおおおおおお!!」
*
まずは第一波!
リンゴの木から飛び出す無数の果実ミサイル!
「クラリス! 高熱散布だッ!」
「了解! 《圧縮蒸気・農法三号!!》」
ドッゴォォォォン!!
蒸気爆発がリンゴ弾を迎撃し、俺はその隙を縫って地を駆ける!
「“枝腕”がくるわ、ユウト様!」
「見えてる!!」
暴れ狂う幹の枝がムチのように唸るが、俺のスキル【収穫適期】で隙間を瞬間ステップ!
俺は果実ミサイルの弾道を逆利用し、爆風で加速、敵の背中へ!
「ここだ……! 一瞬だけ、実が開く瞬間がある!」
スキル【収穫適期】が限界まで輝き——
「今だ!!」
俺の大鎌が、リンゴの幹を裂き、金色の“核”へと達する!
——だが!
ガキィィィーーーン!!
「なに……っ!? バリア!?」
核は、自動防御機能で強固な魔力結界を展開していた。そしてすぐに、後方へと移動した。
「ユウト様、後方より魔力増幅中、きますわ!!」
その瞬間、周囲の地面から——“苗”が生える。
いや、それは苗じゃない。
「リンゴ?果樹兵か?! “リンゴ果実兵”が生まれてきやがった!」
アップルベヒモスから落ちた果実が、地面に根を張り、リンゴの兵士に進化していく!
果皮は甲冑のように固く、両手は鋭利な枝状の剣!
「クラリス、援護を!」
「こちらも対応しますわ! マークIII、過熱限界解除!」
《ジュワワワワワ!ピシューーーン!》
熱水がライフルのように、前方の果実兵を貫通する!
「スキル発動——【適期収穫】ッ!」
果樹兵の胸元に一瞬光る“実の継ぎ目”。
そこを一閃!
ズバッ!!
——果実兵は爆ぜて蒸散した。
それでもまだ、移動したコアに近づけない。むしろ幹を伸ばし、リンゴの大砲と化した果実を天に構える。
「……マズイ、撃ってくる……!」
次の瞬間——
《轟ッ!!!!》
音速を超える果実弾が発射された。
赤い閃光が空を裂き、王都方面へと向かう!
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