第6話 婚約者とスイカ割り勝負!? 夏の農業フェスティバル開幕!
王都を巻き込んだ、夏の熱き農業イベントが開幕!
畑と恋をめぐるスイカの乱の始まりだ!
王都の南広場。いつもは閑散としたその場所が、今日はにわかに活気づいていた。
屋台にステージ、そして無数の屋台ブース。
名付けて――
「王都夏の収穫祭(農業フェス)〜愛とスイカの試練〜」
発案者はクラリス王女。
農業を“王都民に広める”ためのイベントとして、王族主催で行われることになった。
「まさか本当に国を巻き込むとは……」
「フフフ、やるからには全力で参りますのよ! 今回の目玉はもちろん……“王都スイカ割り対決”!」
「またすごいこと言い出したな!」
そう、今や王都周辺では夏野菜の収穫真っ盛り。
その中でも今年はスイカが異常に育っていた。
なぜなら――
「見よ、この《超巨大スイカ(シュガーボム)》を! 君たちの凡庸な野菜とは一線を画しているッ!」
そう豪語したのは、エルヴィン・フォン・ガルネリ。
なんと奴も“貴族農園”を展開し、育てたスイカでフェスに殴り込んできたのだ。
そして言い出した。
「どちらのスイカが王都一か――勝負で決めようではないか!」
いやもう、なんでお前そんなノリノリなんだよ。
「ルールは簡単。育てたスイカを使用し、観客の前で“スイカ割り”を行う。
見事命中したチームが勝者となる!」
「いやそれ、自分が育てたスイカを自分で割るの!? 育てる愛どこ行った!?」
「農業は破壊と創造だッ!!」
「それっぽく、アツいこと言ってるけど使い方間違ってない?」
*
そして、迎えた決戦の瞬間。
「挑戦者、農家チームはクラリス・フォン・ルミエール王女!」
「え、俺じゃなく!?」
「わたくし、どうしても、やってみたかったのですわ……!」
麦わら帽子をかぶった王女が、バンダナで目隠しをして、棒を手に持ち、スイカの前に立った。
「ええっ、姫様、最高に美しいです!スイカに嫉妬してしまいそうなくらいに!!この国に生まれて良かった!!」
「何を言ってんだよエルヴィン……」
そして、俺がクラリスの肩に手を置く。
「いいか、スイカの位置はそこから三歩前、そして、ちょっと右そこが“収穫のタイミング”だ」
「……ええ、わかりましたわ」
クラリスが一歩、また一歩と進み――
「それッ!!」
ズバンッ!!!
完璧な一撃。
赤い果汁が、まるで勝利の祝福のように空へ舞った。
「お、おおおおおおおおっ!!」
観客から歓声が沸き上がる。
「クラリス様ぁぁぁ! スイカ割りうますぎるぅぅ!!」
「スイカになりたい!!」
「それは褒めてるのか!?」
一方、エルヴィン陣営。
貴族農園で育てた“超巨大スイカ・シュガーボム”に挑むのは……エルヴィン本人。
「では行くぞ! 我が一撃、貴族の誇りを見せてやろう!」
「いけー!!」
「がんばれ!エルヴィン様ー!!」
――しかし。
バシュッ!!
エルヴィンが何かする前に、スイカが勝手に爆発した。しかも……
「……なっ……!? 中が……空っぽ!?」
そう、それは見た目だけが立派な“空洞果”だった。
肥料を与えすぎてすぎて、中身がスカスカになっていたのだ。
「ぐぬぬ……! 貴族の面目が……!」
俺は思わず言った。
「……スイカは、見た目じゃなくて“中身とタイミング”だな」
*
こうして勝敗は決し、観客の拍手と歓声の中、クラリスが俺の横に歩み寄ってきた。
「ユウト様……勝ちましたわね!」
「まあな。……しかし、クラリスは、農家より、剣の才能の方があるんじゃないか?」
「ふふっ、魔法剣までは、一通りマスターしてますわ!でも、農業の方が楽しいですわ」
クラリスの頬には、赤い果汁がついていた。
俺はそっと、それを指でぬぐって言う。
「……来年も、育てるか。スイカ」
クラリスは一瞬目を見開いたあと、少し恥ずかしそうに笑った。
「……もちろん、ご一緒に」
夕暮れの中、夏の風が二人を通り過ぎた。
――だがその翌日。
王都にまたしても不穏な噂が流れ始める。
「東の峡谷地帯に、異常な速度で広がる“凍結作物”があるらしい……?」
そして、王立魔導院が発した緊急通達。
「気をつけろ、あれは……“魔族”の作った《氷の苗床》だ!」
次回!
「冷気と野菜のデスマッチ! 氷の苗床と灼熱トマト」
極寒VS猛暑!? 夏を越せるのは、どっちの野菜だ!?
そしてユウト、クラリスを守るため“進化”する……!
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