【コラボ】土門博臣&ヨルデンハイツ

 さて、質問企画第二弾。

 今回はコラボという形に挑戦することになったのだけれど、会場は既に若干の気まずさが流れていた。


 インタビューに応えてくれるのは、土門博臣とヨルデンハイツの二人。

 

 初めましての方のために、ここで軽く二人の紹介を記述しておく必要があるだろう。


《土門博臣》

 望月ひなた様が描く、「めぐる季節は呪詛の味〜パティスリーシノノメの事件録」の登場人物の一人。陰陽師の末裔でありながらパティシエの顔も持ち合わせた男性。

 悪霊や妖を退治しながら、自身の式神である音羽とともに、北海道の小樽市でパティスリーシノノメの経営に勤しんでいる。

https://kakuyomu.jp/works/16817330664738462913


《ヨルデンハイツ》

 「RE:SELECT」にて、クラムローブ街でレヴィとタニア、そしてコルトと出会った妖しげな帝国出身の男性。

 心に美しい女性を宿していて、それが言動に滲み出ていて、レヴィたちは一瞬警戒していたけれど、芯の通った優しさに打ち解けることができた。

 元冒険者で、その階級は白金級。

 帝国では、軍医中将として貢献。


 これ以上、インタビューを焦らすと会場の空気が、とんでもないことになりそうなので、早速始めよう。


【お待たせしました、インタビューを始めます。軽く自己紹介をお願いします。】


土門博臣どもんひろおみだ、今日はよろしく頼む……と言ってもあまりこういうのは得意じゃないからお手柔らかに頼む」

「あら、初々しくて可愛いじゃない。私はヨルデンハイツ、長ったらしいからヨルでいいわよ?」


【問一、お互いの第一印象は?】

 

「そうだな……初めてみるタイプだなと思った」

「あら、それだけかしら。恥ずかしがらなくてもいいのよ? そうねぇ、博臣ちゃんの印象……一言で言えばいい男ね。でもただのいい男じゃないわ、外見だけじゃない……独特の空気ねぇ。あなた……相当デキそうね、うふふ」

「……勘弁してくれ」


【問二、過去一番怒った出来事は?】


「怒ったことか……家族を揶揄された時だったかな。当時、俺もそいつもガキだったが、どうしても許せなかった……殴って怪我をさせてしまったが、後悔は……あまりしてないな」

「他人のために、怒れることは優しいってことよ。そういう感情は大事にするといいわ」

「ああ、流石に今は感情的に動くことは減ったが、大事にしてるものを侮辱されるのは、好きじゃないな」

「ふふ、魅力が増えたわね」

「そういうヨルさんはどうなんだ?」

「私? そうね……私がまだ帝国にいた頃、私が診てた子たちが消耗品として実験に使われていたことを知った時かしら。私の罪は決して消えることはないでしょうね。今はその罪を償うための旅をしてるってところかしら……んもう、博臣ちゃんがそんな顔をしなくていいのよ。私の罪は私のものなの、他の誰にも分けるつもりはないわよ」

「ふっ、……あんたもいい男じゃないか」

「いやん、私はいつだって乙女なのに」


【問三、今日はお互いに自分の世界のお土産を持ってきているみたいですが、交換してみてどうですか? 感想を教えてください】


「……、ヨルさん。俺にどうしろってんだ?」

「あら? こういうのそっちにはないの? それは普通の回復薬じゃないのよ? 私特製のすっごく元気になれるお薬なの」

「見たことのない色をしているんだが、これは飲むものなのか?」

「そうよ、私の魔力もたっぷり入れてあるから、多少の傷なら一瞬で治るわよ」

「……使わずに済むことを祈るよ」

「ふふ、それはそうね。博臣ちゃんがくれたのは、これはどう使うものなのかしら? とても可愛い模様だけど」

「ああ、風呂敷と言ってな。ここをこうして結べば物を包んだで運んだりできる。それにあんたには必要ないかもしれないが、傷口を防いで防菌するのにも役立つ。旅をしてるってのは、前に聞いていたからな……こういうのがいいかもと音羽と話し合って決めたんだが、どうかな」

「ありがとう。大事に使わせてもらうわ……でも乙女の前で他の女の名前を出すのは、減点よ? ふふふ、冗談よ」

「……」


【問四、誰にも言っていない密かな趣味はありますか?】


「趣味と言っていいのかわからないが、商品を配達する途中でよく昼寝してるな……車の中でな」

「いいじゃないの、睡眠は心の回復に効果的なの。素敵な趣味だと思うけど、張り切り過ぎて体を労らないのは駄目よ? 聞いた感じ、博臣ちゃんのやっているお店は、博臣ちゃんが倒れたら終わりでしょ? そうなる前に、自分でしっかり休むことを勧めるわ」

「ああ、肝に銘じておくよ……あいつにもよく言われるしな」

「ふふ、仲がいいのね。私の趣味は、そうねぇ……薬の開発かしらね。この間創った薬は面白かったわよ。飲めばたちまち動物の言葉がわかるようになるのよ、犬や猫、鳥の言葉までわかっちゃった時は、流石に驚いたわ」

「ちょっと待ってくれ、それは本当か?」

「ん? ええ、本当よ?」

「本当に猫の言葉がわかるようになるのか?」

「ええ、効果は一日しかないけどね」

「頼む、後でこっそり何個か買わせてもらえないか?」


【問五、お互いが最も大事にしている人へ一言お願いします】


「そうだな……一言じゃあいつへの感謝は言い表せないが音羽がいなかったら、今こうして生きていられなかっただろうからな」

「うんうん、それで?」

「それで……?」

「その子に伝えたいこと、ちゃんと言葉にしてあげて」

「……、ありがとう。いつも俺を支えてくれて」

「はぁい、よく出来ました」

「……はぁ、本当に勘弁してくれ」

「ふふ、でも大事なことよ。言葉にしなくても伝わるなんてのは、都合のいい解釈でしかないの。言葉でも文字でもいい、不恰好でも伝えなきゃ。言葉にしても伝わらないことだってあるんだから……ね?」

「あんた、本当に俺と歳近いのか? 人生二週目とかじゃないだろうな?」

「ふふ、そっちの世界より、ほんの少しだけ絶望が身近にあるってだけよ。私は、ニトに向けることになるのかしらね。あの子はまだ、何色にも染まってない……綺麗なの。だから、出来るだけあの子のやりたいように、生きたいようにさせてあげたいのよ。あの子に言う言葉はそうね……、未来に期待しなさい、…かしらね」

「ニトという子は、きっと強く育つさ。あんたがそばにいるんだろ? なら大丈夫だろう」

「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。ありがとっ」


【問六、過去一番嬉しかったことは?】

 

「俺は、自分の店をオープンできたことだな」

「それはすごいじゃない、おめでとう。私は希望の兆しを宿した子たちに出会えたことかしらね。レヴィとタニア……あの子たちはきっと何かを変えてくれる。そう思わせてくれる子に会えたのは、とても幸運なことだと思うわ」

「へぇ、あんたがそこまで言うのか。少し興味あるな」

「とってもいい子たちだったわよ」

「だろうな」


【問七、毎日必ずやっているルーティンは?】


大祓詞おおはらえのことばの奏上だな」

「おお…はら、ごめんなさい、なあにそれ?」

「ああ、そうだな。そっちにはないだろうな。簡単に説明すると、生きている間に溜まってしまう、己の罪や穢れを清めてくださいと、神に祈る言葉のことだ」

「へえ、神に祈る言葉……、いつか聞いてみたいわ」

「機会があればな」

「私は薬品の検品ね。もう習慣になってるだけなんだけどね」

「わかるな、俺も店の在庫は無意識に確認してたりするからな」

「そうそう、職業病ってやつね」

「ああ、間違いない」


【問八、これだけは譲れないもの、ことはありますか?】


「どんなに辛く悲しくても、最後には笑っていられるように。俺だけじゃなくて、俺に関わった全ての人々が、そうなってほしいな」

「随分と大きなものを背負ってるのね。……私が譲れないものは、さっきも話したけど、私が犯した罪の全てね。それだけは、私が向き合わなくちゃいけないことだから」

「あんたも大概、大きなもんを背負ってんじゃないのか」

「そんなことないわよ、それを重荷なんて思う資格は私にはないし、押し潰されるとしても、弱音なんか吐くつもりはないわ。あの子たちの全てを私は忘れない……それは背負うものじゃないでしょ? 大事に大事に抱えるものなのよ」

「そうだな……あんたと今日話せてよかったよ」


【問九、一日自由な時間が急にできました。何をしますか?】


「とにかく寝るだろうな……と言いたいが、多分音羽とどこかに出かける流れになるだろうな」

「あら、いいわね。私も是非混ぜてほしいわ」

「……あ、ああ。そうだな、そうできたら……いいかもしれないな」

「博臣ちゃんってば、誤魔化すならもっと上手くやってちょうだい」

「……すまん。それより、ヨルさんは何するんだ?」

「私は……何するのかしらね。あれ?」

「……?」

「待って、言われてみれば、私って逃亡中の身ではあるけど、基本的に放浪中だから、毎日毎日自由時間しかないわ」

「……それはその、なんと言ったらいいか」

「やめてっ! その憐れむような目はやめてちょうだい! 違うのよ、私だってちゃんとした職に就いて、家を持つべきだとはわかってるのよ?」

「わ、わかったから、落ち着いてくれ。俺は別に何も言ってないだろ。おい待て、その構えはなんだ? 滲み寄ってくるな……落ち着け。おい、次の質問に行ってくれ! 早くっ!」


【問十、次にお互い会ったら、一緒にやってみたいことはありますか?】


「ぜぇ、はぁ……はぁ……この状況で、そんなこと聞くな。ったく……ヨルさんのことは少なからず、気に入った。心意気というか考え方は、話していて感心したし興味もある。だからそうだな……あんた、酒は飲めるか? 飲めるなら、次は俺の国の美味い酒を一緒に飲もう」

「うふふ、ふふ、ふふふふ。なかなかやるわね、博臣ちゃん。この私が組み敷けないとは思わなかったわ。お誘いは喜んで受けるわ。是非その機会が訪れることを期待しているわ」

「それに、うちの店のものも食べてもらいたいな。そっちの世界の人間の舌に合うのか、興味がある」

「それはいいわね、楽しみにしてるわ。私は、次博臣ちゃんに会ったら、さっきの神への祈りというのを見せてもらいたいわね」

「あまり見せびらかすものではないんだが、黙って見てられるんなら、まあいいだろう」


【ありがとうございました。インタビューは以上です】


「ああ、なんとか終わったな」

「ふふ、名残惜しいわ……ね? 博臣ちゃん?」

「……」

「……ね?」

「……ああ」




 インタビューが終わると、博臣は流れるような動きで、会場から姿を消していた。

 その後、彼を探し回るヨルデンハイツのクネクネと蠢く姿が、会場の至る所で目撃されたのだけれど、博臣の精神衛生上、報告しないほうがいいだろう。


 質問企画、第二弾が果たして成功したのか、そうではないのかはわからないけれど、きっと次回があることを信じて、幕を閉じようと思う。


 では、また。

 いつかの時代、どこかの世界で生きるあなたに、一つでも多くの幸が舞い降りんことを。


[追記]

 望月ひなた様のところには、「RE:SELCT」よりミーシャが出張して、博臣の式神である音羽との質問企画に参加しています。そちらも見ていただけると、私も嬉しいです。

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