4-2.冬の終わり
三
学校が始まる少し前。前に来た喫茶店の、今度は店内で愛衣はいちごソーダを飲む。ここのいちごソーダの味は前と変わらずおいしかった。
「いやあ、一時はどうなるかと思ったけど良かったわ、雪ナイス」
「がんばったよ〜、ほんとにさ〜」
「その節は大変ご迷惑をおかけしまして……」
えへへ、と首に手をやりながら愛衣が謝罪する。正面では秋穂が小さくなって「ごめんなさい」と言った。
「でもさ、二人とも運命の恋が来て良かったね?」
にやりとからかうように美月が言う。否、完全にからかっている。ぐぬぬ、と愛衣が顔を赤くしながら反論できずにいると、秋穂が口を開いた。
「愛衣は私の運命の王子様だったね」
まさかの追い討ちだった。自分の味方をしてくれると思っていた愛衣は「秋穂の裏切り者〜!」と言いながら腕に顔を埋めて隠す。
「なんだか甘酸っぱい気持ちでいっぱいになるね〜、私もこの後彼氏と遊んでこようかな〜」
雪がスマートフォンを操作して相手にメッセージを送る。それを見た美月もスマートフォンを取り出した。
「私も彼氏に会いたいね、連絡してみよっと」
「……二人ともさ、あたしたちを二人にしようとか気を使ってる?」
二人は「まさか」と口では言うものの、顔はにこにことしているため、その気持ちもなくはないのだろうと愛衣は思った。秋穂も同じように感じたらしく、愛衣の代わりに言葉を続ける。
「私、四人でいるのも大好きだよ。だから一緒にいたいな」
「かわいいこと言ってくれちゃって。でも暇だって返事きたから、私はちょっとしたら彼氏と遊ぼうかな」
「私も遊ぼって返事きたから、もうちょっと話したら行こうかな〜」
四人はほどよいざわつきの店内で笑い合う。三十分ほど話したところで美月と雪が席を外すことになったため、愛衣と秋穂も店を後にすることにした。店の入り口で二人と別れる。
「それじゃあ、いつもの雑貨屋でも行きますか!」
「うん、私も一匹連れて帰りたいから、愛衣のおすすめの子を教えてほしいな」
「え、秋穂も買うの? じゃあやっぱりハリネズミちゃんかな」
「ギョロ目ちゃんかあ、かわいいけど手触りがいい子の方がうれしいかな」
「あ、やんわり断られた〜」
ふふ、と二人で笑い合う。不意に愛衣が秋穂の前に手を出す。
「寒いしさ、良かったらどうですか、秋穂姫」
にひひと笑いながら言う愛衣に、秋穂は笑って手を差し出す。
「じゃあよろしくお願いします、愛衣王子」
手を繋いで雑貨屋までの道のりを歩く。
万華鏡のような日々が戻る。空っぽになって灰色になった中に、宝石が戻ってきらきらになる。きっとこれからも増えていく。万華鏡が回って、色とりどりで綺麗な光が二人を照らした。
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