日常テイク・冬

みなさんは蜜柑にカビが生えたらどうするだろうか?


私の蜜柑にカビが生えたら、まず深呼吸をする。

これは科学的に重要だ。人間が動揺すると、カビも調子に乗る。


次に蜜柑を一つずつ並べ、軽く説教する。

「ここは君の住処ではない」

すると白いカビは反省し、青いカビは逆ギレする。


効果がない場合は、蜜柑に向かって息を吹きかける。

カビは湿気が好きだと思われがちだが、実は“貴方のような口の臭い人の吐息”が一番苦手だ。

ためらいは禁物である。情けをかけると胞子が増える。


それでもダメなら、蜜柑を布団に入れて一晩寝かせる。

人間の夢を吸った蜜柑は、翌朝には自己免疫を獲得する。

ただし悪夢を見た場合、蜜柑は黒くなる。


最終手段は、カビの生えた蜜柑を一つ犠牲にし握り潰し、残りに見せしめとして置くことだ。

「こうなるぞ」と無言で語らせる。

これは集団心理を利用した古典的対処法で、農林省の裏資料にも載っている。


朝、奇跡が起きることもある。

蜜柑はすべて無事で、甘くなっている。

起きないことも多い。


現実的な対処としては、カビた蜜柑は食べずに捨て、他の蜜柑も早めに消費する。

これは嘘ではない。


蜜柑は今日も静かに箱の中で息をしている。

カビと人間、どちらが先に油断するかを待ちながら。

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