つまりどういう事だ? …■■■■って事だよ。

空は、いつからか蓋をされたようだった。

雲は塗り固められ、世界は籠になり、人はその中で息を潜めていた。


理由は告げられない。

ただ名のため、命のためと押し出され、征けと命じられる。

友はなく、祈りは流れ、正しさは踏み砕かれた。

それでも行けと言われる。治めろと言われる。

世界は常に命令の形をしていた。


――やえやえ、人の子よ。

火はよく燃える。近づけば、いずれ灼かれる。

川はよく流れる。掴めば、形は残らない。

門はよく開く。だが、戻る道はない。


その声を聞いた者も、聞かなかった者も、

最終的には同じ場所へ集められた。

巨石が歯のように並び、内と外を分かつ場所。

闇の中に一人、幕の向こうに二つの影。

待て、と世界は言った。


待ち続けた果てに、ひとりが叫んだ。


「天照らす空の王であるぞ。

 我こそが、御空の王であるぞ!」


狂気のしるしを掲げ、刃と贄を並べ、祝宴を整えた。

酒は満ちたが、杯は口に届かなかった。

灯は草に埋もれ、理は刻まれ、封じられた。

王は立っていたが、誰も王を仰がなかった。


そのとき、最後の言葉が流れた。


流れ去り、王は天に留まらない。

民は王であり、王は民である。

――水のように、そう在れ。


王を名乗った者は、名を失った。

だが名を失ったその瞬間、

人々の間に、静かな流れが生まれた。


誰も王を戴かず、

誰も天に縛られず、

水は低きへ、しかし確かに進んでいった。


空の蓋は、まだ外れていない。

だが、世界はもう、ひとつの王を必要としていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る