一、貴賤・優劣・無知知無知

 希少価値、などとはよく言うが、本来、数量の多少による貴賤や、優劣はない。


 なぜならば、森羅万象は平等に有価値だから、である。


 そして全てが平等に有価値だと言えるのは、全てが合一、全が一、一が全だから、である。


 本来、宇宙コスモとその構成要素コンポネントに、境界線はない。


 例えば赤子は、一部近親者を除いては自他の区別がないのであり、ひいては時さえも、己と乖離かいりはせずに、一括ひとくくりに知覚している。


 赤子の知覚は、抽象的知覚である。


 一方で、赤子だった存在は、のちに、生物学的成長と比例して、具象的知覚偏重へと移行する。


 その移行現象というのは、換言すると、知的存在というのは、言語や数字を介した論理という一見それらしいが不完全で解像度(ここでは分解能ぶんかいのう的な意味である)の低い認知・知覚手段のとりこになって、己は賢くなったと思い込みながら、実は認知限界を狭めてしまっていく現象、である。


 それは、具象化された社会に適応するにあたって、という限りにおいては、必要な「進化」ではあるのだが、見方によっては、低次元——低しき質・低音質・低こう質・低しょく質・低質——への「退化」である。


 低次元において、語的数的虚構の賜物たまものを用いて、連続階調的にではなく粗雑段階的に評価された、不憫ふびんな対象物たち。


 それらは全くもって不必要な犠牲であり、そのような仕打ちが蔓延はびこるのは、宇宙無境界の大前提が周知されていない証拠である。

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