一、生死

 生死は隣り合わせである。


 死の次には新たな生がある、という円環存在の前提ではあるが。


 ところで、円環存在の証明のための、ひとつの事実がある。

 食物に関して。

 生物なまものも、腐敗したものも、食らえば、腹を壊す。

 下痢をする。

 節目としての始終的生死に近い存在は、現象世界での次なる存続開始に痺れを切らし、捕食者の中から、病的なまでに一刻もはやく、出んと欲するのかもしれない。


 生と死とが互いに本質的に近いからこそ……


 老いに老いた者は赤子のようにふるまう。


 感情の制御ができない。

 すぐに泣き喚く。

 極めて短気で頻繁に癇癪を起こす。

 我儘ばかり。

 自分で自分の身の回りの世話ができなくなる。


 生まれ、育ち、逝けば、赤子。


 回帰である。

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