一、無

 (願わくば、これより先を、言語化したくはないが、あえて、しよう)


 世はいつである。


 一とは、ない、が、ある、状態である。


 世は本来、無である。


 が、有という存在概念——己に相反する他という存在——の出現により、一が、無に、無が、有へと、偽称的に改名、自己分裂する。


 つまりは、一の、一による、一のための、自己同一性の崩壊である。


 世界の分節化、とも言えよう。


 (そうなった理由は、ぜひ、各人で想像していただきたい。どこの誰の中においても、既にその理由は、ある。私も一つの解釈を、いずれ、示そう)


 無と有は、対、である。


 双子である。


 言語化——抽象世界(=一の世界、非顕現世界)の具象世界(=無限つい現象世界、顕現世界)への次元段階降格——という名の、我々の最高の武器の認知限界においては、対、の形でしか、あらゆる創造をし得ない。


 つまり創造物は、新創造物Nと、"非"新創造物Nとの、対で生まれる。


 さらなる具象化を試みれば、世界を網膜刺激の視覚的情報に限定して描く時、その極度単純構成要素は、光と闇と、ではなく、光と光"でないもの"とで、という具合に、対生成された存在・非存在として、即ち一ではない二として、認知できてしまう、ということである。


 繰り返しになるが、なぜそうなったのか、の明確な回答を示す方法は、森羅万象の各々が、無限大なる一の世界の内側に、感じ、想像し、意識し、判断し、場合によっては具象化言語化する、しかない。


 (科学という宗教の名の下で言語化された一例は、ビッグバン、であろうか)

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