第7話 蝶々雲

火葬場の中庭みたいなところのベンチに腰掛けてるあの人を見つけた。

空を見上げながら煙草を口から細く吐き出している。

まるで、空へ煙草の煙を届けらように見えた。

「ねぇ、凛ちゃんのママは煙草を吸うの?」

「ううん。吸わないよ。あれ、パパのじゃないかな。」

あの人の左手には見覚えのあるジッポーが握られていた。

あれ、お父さんが大切にしていたジッポーだ。子供の頃、カチャ、チャ、ボーとジッポーの火がつくのが面白くて何回もやって欲しいと頼んだっけ。


「凛ちゃん、ママね、お空に行ったパパに煙草を吸わせてあげてるんだと思うんだ。だからね、ママが終わるまで待とうね。」

「うん。パパ、お空で吸ってるね。」


あの人は吸い終わると私たちの方へゆっくりと歩いてきた。

その顔には涙は無くなにかしら満足そうだった。




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