第5話 黒いアゲハ蝶

火葬場で火葬されてる時間は私にとって気まずい。

まあ、仕方ないけど、火葬場に足を運んだのはあの人とあの人の娘と私だけだった。

父方の親類はいい年をした父の行動に腹を立てて絶縁状態だから誰も来ないのは仕方ないのか、、、。

「あのう、精進落としですが召し上がって下さい。」

「いえ、お気を使わないでください。」

「、、、。実はもしかしたらご親戚が来てくださるかと準備してしまって、、。」

あの人の視線の先には精進落としのお弁当が20くらい積んであった。

それを見たらなんだか断れない気持ちになった。

三人で待合で食べるお弁当。ちゃんとした物だったから悪い事をしたような気持ちにさえなった。


「お母さん、このお姉さんだあれ?パパの知ってる人?」

えっと、まさかの質問?でも無いか。そらぁおかしいって思うよね。

「凛、あのねお姉さんはパパの子供なのよ。ほら、いつもパパが話してたでしょう?」

あの人が遮るように話した。父が私の事を話してたの?うっそー。なんて話したんだろ。知りたい気持ちが止められない。

「あー!冴ちゃんでしょ!パパがね、冴ちゃんはとーても賢くて優しいんだって話してたもん。うわー、冴ちゃんだ、冴ちゃんに会えた!」

無邪気な姿にどうしていいものやら苦笑いするしかない。

「ごめんなさい。貴方は嫌よね。馴れ馴れしくされたくないわよね。」

「いえ、そんな事ありません。正直言って父が私の事を話してるなんて思わなかったんです。もう、私の事なんか忘れてしまっていると思ってたから。」

「そんな事ないのよ。電話したり手紙を書いたりしてたわ。でも、、、。奥様がそうした事はしないでほしいとおっしゃって。私のせいね。」


知らなかった。

父が私にそんな事をしていたなんて。

お母さんらしい。

決して自分に恥をかかせた人間を許さないもの。




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