第2話 子蝶

葬儀場に着いて、職員さんに声かけて会場を訪ねてると知ってる人達が通り過ぎて行った。父の会社の人だ、以前会った事があるもの。

思わず見つからないように顔を背ける。

確かにお母さん来ない方が賢明ね。


受付は知らない人だ。香典を渡して記帳する。

別に苗字が同じなんて親戚くらいにしか思われないからここはスルー。

一番後ろの席に目立たないように座りながら、私の視線は喪主の場所を追っていた。

そこには父には不釣り合いの若い女性とまだ小さな女の子がいた。

「へぇー、すごいわね。籍も入ってないのに、堂々と喪主だなんて。黒い着物にキチンと髪を結ってる、、。女の子も黒いワンピースに黒いリボンで髪をまとめてるか。やるわねぇ。死ぬ前に準備してたのかしら?」

私はそこ意地悪く呟いた。


尚香が私の番になった。

私は彼女とその娘をじっと見る。

彼女は一瞬に顔色が変わって、目が泳いでる。たった数分だったけど、彼女は気がついたみたい。母じゃないって。

そしたら肩から力が抜けてほっとしているのが伝わってきた。

「そうよね、お母さんと私って似てないもの。服や持ち物はまるきりお母さんだけどね。持ち物だけで間違えるんだ。

ほっとなんかしないでよ、私は父のたったひとりの娘なんだから。」

私はどうしようもない怒りを堪えながら尚香を終えた。   

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