鬼灯
菜の花のおしたし
第1話 蝶紋
父が死んだと母が言った。
母はお葬式には貴方だけで行ってちょうだいと一言。
この人は弱い振りをして面倒な事を周りに上手く押し付けてくるのが得意だ。
葬儀場の場所を調べてると、
「これ、香典。常識外れだって思われたくないから。」と筆ペンで達筆な文字が記されている。
私は、どんな事があっても礼儀作法は心得てますってアピールなのよね。
「はいはい。」
「それと、これを着て行きなさい。バックとお数珠も置いてあるから。」
「これ、お母さんのじゃない?私も大人だから持ってるわよ、喪服くらい。」
「あんなペラペラの安っぽい物で行くつもり?あなたはあの人の娘なのよ。
きちんとして欲しいわ。サイズは大丈夫よね。」
それだけ言うと踵を返すように自分の部屋へ戻って行った。
この式服。
光沢のある黒、漆黒の黒。ワンピースのスカート部分はプリーツになっている。
良くみると生地の時点で折りの柄が主張せずに入っている。
布の手触りが全く違う、、、。
黒蝶真珠のネックレスと数珠、黒いレースの手袋、透かしの入ったの白いハンカチ。上品なバック。黒の髪留めまである。
いやだな。
これじゃあ、まるでお母さんじゃない、、、。
行かないけど、自分の存在を見せつけてやりたいってこと?
うんざりした気持ちで着替えて車に乗り、葬儀場に向かった。
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