【8】沙綾 ―「“好き”を、誰かと共有したくなった」
ずっと、自分だけの世界だった。
お気に入りの本も、映画も、言葉も。
でも、彼には見せてみたくなった。
心の中に、彼の居場所が自然にできていた。
「今度、観に行かない? 私の好きな小説、映画になるの」
あのとき、彼が「うん」と頷いた瞬間、
私の物語に、初めて“共演者”ができたような気がした。
上映後、私たちは並んで歩いた。
「あなたと観たから、もっと好きになった気がする」
その言葉は、私の心から滲んだ、まっすぐな告白だった。
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