【7】鈴木 ―「本棚の奥に、彼女の人生が並んでいた」
渡辺さんの家のドアを開けた瞬間、
本の香りがした。
壁一面の本棚。どれも、彼女の時間を積み重ねた証。
「これ、私が初めて買った本」
差し出されたその一冊は、装丁の角が丸くなっていた。
触れた瞬間、まるで彼女の手の温度が伝わってくるようだった。
「この本が好きって言ってくれたら、たぶん私のことも少しはわかってくれる気がする」
そう言って笑ったその顔は、どの表紙よりも、印象的だった。
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