第1話 異常者
——————俺は”異常者”だ——————
俺には紋様がない。紋様とは、自分の能力やオーラを具現化したようなもの。それがない俺は魔法が使えない。心臓がないと、血が流れなくて死ぬ原理だ。
「イクスー。やっぱり能力使えない...」
そんな俺にでも気軽に話しかけてくれるこの女の子は幼馴染のリンだ。
正直...好きだ
「力の入れ方が違うとか?うーん。わかんなッ!」
「今日も一緒に【帝国騎士団支部訓練第二部隊】のバクさんのとこ行こ」
いやなげーよ。
帝国騎士団は、この惑星「アルファ帝国」を護る部隊。その支部には、元隊長や元副隊長もいるし、俺ら2人は自由に稽古をつけてもらえるので、結構な頻度でいっている
「あら、こんにちは。イクスさん、リンさん。今日もリンさんの件ですか?」
リンは、紋様の特性が発動しないからいつも通っているんだ。
バクさんがリンに紋様を見せるように促す
紋様を持っている者たちは自由に、表示/非表示できる。
リンの紋様は鷹だ。確認されている紋様は全部で6種類だ。
1つ目は、「鷹」。リンの紋様だ。特性は空を飛ぶことだ。
2つ目は、「鬼」。俺の父さんの紋様だ。特性は馬鹿力。
3つ目は、「鮫」。身内にいない。特性は水中呼吸だ。
4つ目は、「狼」。こちら身内にいない。特性は影に入り込むことだ。
5つ目は、「獅子」。俺の...弟の......紋様だ...。特性は...身体強化だ。
6つ目は、「龍」。謎多き紋様。伝説の勇者以来、この星出身は確認されていない...
——————いや、伝えられていないのかもな
リンがいつもよりも長く飛んでる!いけるか?!
俺の思いとは裏腹に落ちてしまった。
「大丈夫ですか?」
バクさんが一瞬でリンのことを受け止める。とてもかっこいい。リンも腕の中で興奮している。
「
特性を使うには、オーラを少し使う。しかし俺らみたいな一般人だと、30分で使いきるくらい少ない。オーラはほぼ体力のようなもの。オーラが0になると、気絶してしまう。だからオーラを一瞬で回復させられるバクさんはとてもすごい人なんだ。
次の日の学校
「おい!お前また来たのかよ」
「相変わらず懲りねぇな」
俺にいつも話しかけてくるのは、いじめっ子のデゥークとジェルだ。
学校で俺に話しかけてくるのは、こいつらと、リンくらいだった。
いつものように無視し、ひっくり返された机を戻し、椅子に座った。
今日は椅子に何もなかったな。
俺の名はイクス。魔術学校の、
※PSIの正式名称は
15歳の俺は、5年生だ。
この学校に留年制度がなくてよかったよ。
ほかの国にはあると聞いたことがあるからね。
だからリンと同じ学年に入れ、嬉しいことにリンとは常に同じクラスだ。
多分親が操作してるんだと思うけど...
年で決まるため、とても強い能力者と弱い能力者の間で格差が起きるのは当然。
デゥークとは攻能者という分類の能力者で、この学年の中で一番強い。
攻能者とは、攻撃に特化した能力者だ。そして俺には能力があるはずもなく、
学年、いやこの学校一弱いといっても過言ではない俺がいじめの対象になるのは
明確だ。
それでも、俺には一つだけ誇れるものがある。
頭脳だ。
「力がないなら、知恵で補えばいい」——それが俺の信条。
俺は自分のステータスを“知”に極振りしている。
そしてとても憂鬱な4時間目の体育の時間が来た。
なぜかって?そりゃ俺が
それに今日はいつもより最悪だ。だって俺の弟のいる1年と合同だからだ。
俺の弟は学年で3番目に強い猛者だ。だからいつも煽られる
「は~い。今回は1年生初めての校外学習です。草原にいるスライムを倒して
能力の向上に向けて頑張りましょう。
1年生は好きな5年生を選んで一緒に退治してくださいね」
「5年生は1年に怪我をさせないように」
と、1年と5年の先生が言う。
一目散に俺のところに来たのはやはりこいつ、弟のカウルだ。
あいつの笑みは兄に向けるものというより、敵を挑発するそれに近い。
——弟ってなんだっけ。血のつながった煽り屋?
先生の合図でスライム討伐学習が始まる。みんなは軽い攻撃魔法などで退治している。すごい人は特性と組み合わせて一気に討伐してる。カウルは次々とスライムを一掃する。とてもすごいがなんか悔しい。
「お前もやってみろよ!兄らしく弟よりもすごいやり方でやってくれるんだろうな?あーごめん無理かwだって雑魚だしwww」
とてもイラついたが、何も言い返せない。だってその通りだもの、俺はスライムを退治しようと1年のころ頑張ったが、俺はスライムを一匹も倒せなかった。そのころから、スライムすら護る
まぁ、平和主義者らしく、モンスターを殺そうともしてこなかった。朝起きたら勉強、帰っても勉強、風呂でさえもポスターで勉強という生活を送ってきたからこのときも強く反対した。
「俺は自分の実力を上げるためにモンスターを殺すのは間違っていると思うんだ!」
「いやお前肉好きじゃんwどの口が言ってんのさw」
「いやあれは生きるために必要で...」
「こうした自分磨きも生きる上で必須で草w」
「別に殺さなくたっていいじゃないか筋トレとかジムとかで...」
「わかってないなー...100回の筋トレは1回の実戦と同じくらいなんだよw」
「そんなこともわからないお前は低能定期www」
といつもこんな調子で気が滅入るよなんなら俺が身を挺してスライムをカウルから護ったことだってあるんだし、そのスライムがチョー強くなってカウルを止めてくれたらいいのに...まったく恩知らずのスライムたちだなぁ
やっとのことで授業が終わり、帰ろうとしたら、例の2人に体育館裏に連れてかれた。そこである提案をされた。俺は断ってすぐに帰ろうと思ったが、今回は少し違うようで断った場合も用意されてた。その代償は俺にはでか過ぎて、提案を吞むしかなかった。
その提案とは俺が二度と学校に顔を出さないこと。つまり不登校になれってことだ。
そしてその代償は、俺がひそかに恋心を抱いてる相手であるリンにいじめの標的が向かうことだ。リンと奴らには圧倒的な差があったため、リンが勝つとは考えにくい。なのでこの提案を呑むしかなかった。
それから俺は親には相談せず、自室に引き籠ることにした。なぜなら学校に行かなくなったってことは家ですきなことし放題だってことだから、前に気になってたプログラミングを始めたり、ただひたすらに勉強したりした。
親には学校の授業じゃ物足りないから独学で勉強すると言ってある。週1でリンが遊びに来ることになり、とてもうれしくなった。リンは最初は俺が学校に来なくなり、不安できたらしいが、今の生き生きとした俺を見て安心したみたいでよく遊んでる。
あの日までは——————
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