学年一美少女の嘘告を断ったら、その美少女は僕に断られた罰ゲームで僕と付き合う羽目に

崖淵

第1話 学年一の美少女と嘘告

僕は杉崎達也15歳。花の高校1年生だ。

ごめん、噓ついた。全然花じゃない、ボサボサ頭のよくいるフツメンの陰キャだ。

今朝の登校時、そんな僕の下駄箱に手紙が入っていた。

ピンク色のかわいい封筒だ。中を開けてみると


――放課後、屋上で待ってます(はぁと


ついに僕にも高校1年生にして初彼女が!?


とはならないよ。

みんなも分かってるだろうけど、陰キャにそんなラブレター送る女子高生とかいないから。こんなラブレターを本気で信じる程、僕はイタくないつもりだ。

しかも昨日の休み時間、クラスメイトの中で学年一の美少女を含むギャル系の3人のグループが不穏な会話をしていたのがかすかに聞こえたからだ。「嘘告」とか「あの陰キャならひっかかる」とか「想像しただけでマジウケル」とかなんとか。

僕はその前の日の晩にゲームし過ぎで昨日は一日中眠くて、確かに休み時間中、ずっと机に突っ伏して寝てたけど、とはいえちょっとお粗末過ぎる計画じゃなかろうか。

せめて僕のいないところで計画して欲しい。そしたらほんの少しだけ僕もドキドキできたかもしれないのに……ないな。


だから僕は放課後になった時、普通にそのまま帰ろうとしたんだ。でも下駄箱のところで上履きを履き替えようとしたまさにその時、両脇をガッと掴まれた。……先の話で出てきたクラスメイトのギャル二人に。


「おいおい、杉崎君。君、ラブレターもらってなかったか?それを無視して帰るのかい?ラブレター出した女の子がかわいそうだとは思わないのかい?」


「えっ?(そんな噓告なんて無視するに決まってるじゃないか!)」


「まったくだ。無視して帰るとか、男の片隅にも置けないな」


「そ、そんな(風に思うなら、せめて僕のいないところで計画してよ!)」


僕はギャル二人にそのまま両腕をがっちり掴まれて、屋上に連行されていった。

掴まれた両腕が彼女たちの柔らかい胸に触れて、そこだけは少し嬉しかったけど、これから先の展開を想像すると、憂鬱でしかなかった。



昨日の遣り取り知らなくたって、こんなの嘘告だってミエミエじゃないか。この茶番劇を僕にどうしろっちゅうねん。嘘告断っていいよね?それすらダメとかあるの?


そして屋上の扉が開くと、そこには物鬱げな表情を浮かべながら落下防止用の鉄柵に寄りかかった学年一の美少女がいた。水蓮寺美和(すいれんじ・みわ)さんだ。彼女も僕を掴んでいる両横のギャル二人の仲間なので、基本的には清楚系ではなくギャル寄りだ。でもその美しさはギャル系でも全く損なわれていない。どれくらい美少女かというともう既に何十人という男子生徒が告白して玉砕したという噂があるレベルだ。しかもそれは多分噂じゃなくて事実だと思われる。つか、そんな美少女が僕に告白するわけないじゃないか。もうちょっと頭使って欲しい。

あーあ。これが嘘告じゃなかったらなぁ。僕みたいな陰キャにはただ普通に会話できるだけでもうれしい相手なのにな。


「おーい、美和。連れてきたぞー」


僕の右隣のギャルがその学年一の美少女にそう伝えた。

っていうか、これから告白する人にそんな言い方する?

君たちはもうちょっと演技しようよ。


一方の美和さんはそのギャルの声を無視したまま、物憂げな表情をそのままに夕陽をバックにしながらちらちらとこちらを何度か上目遣いに見てきた。


うわぁ……とってもあざとい!

でもめっちゃかわいい!


もうこれだけでもここに来てよかった。だって嘘告でも僕だけのためにこんなことをしてくれる水蓮寺さん見れただけでお釣りがくる気がする。でもなぁ嘘告は嘘告だしなぁ。

と思っていた僕の反応がよくないことがわかったのか、水連寺さんは作戦を変更したのか、両手を胸の前で合わせてお願いポーズをしながら、僕をうるうるとした目で見つめてきた。


「杉崎君、あなたのことが好きなの。私と付き合ってくれませんか?」


と言うとくるっとその場でサッと一回転してスカートをふわっとなびかせると、僕に右手を差し出してきた。その瞬間、彼女が星が瞬いたように輝いて見えて、嘘告だと分かっているにもかかわらず、不覚にもドキッとしてしまった。美少女ってすごいんだね。

でも、これはこれで逆に演技し過ぎじゃないですかね。まじめに告白する人がくるっとターンなんてしますかね。僕の両脇を拘束しているギャル二人が笑いを堪えてるようにしか思えないんですけど。

これなら断ってもいいかな?

なので、僕は両腕を両脇のギャルに拘束されたままのとてもしまらない恰好で、


「ごめんなさい、付き合えません」


そう言うと首だけぺこりと下げた。

途端にガーンとショックを受けている美和さん。えええ?この流れでOKすると思ってたの?いくら超絶美少女でも無理があるのでは。


「ギャハハハ、美和フラれてやんの」


「マジでー。絶対にフラれるわけないとか言ってたのにな!」


両隣りのギャル二人は大ウケだ。

それは別にいいですけど、そろそろ両腕の拘束をといて解放してくれませんかね。


「ええー、なんで?なんで杉崎君は私と付き合ってくれないの?私のこと嫌い?」


「いや、嫌いも何も嘘告と分かっているのに受ける人なんていないでしょ」


「なんで知ってるの!?」


「えー!?そこなんですか?

まず隠すつもりがあるなら、寝てたとはいえ僕がいる教室内で嘘告計画の相談しないでくださいよ。まぁでもそれがなくても、水蓮寺さんみたいな美人が僕みたいな陰キャに告白するわけないですけどね」


「嘘告じゃなかったら、受けてくれた?」


「水蓮寺さんの告白を断る人なんて、この学校の男子にいるんですか?」


「ほら。ほら。亜希も響子も聞いた!?嘘告じゃなかったら、受けてたって。やっぱりこの賭けは私の勝ちよ!二人が教室で計画を話し始めてバレたんだから、私の勝ちでいいよね?」


「ダメでーす。杉崎が相手ならたとえ嘘でも断れないって言ったのは美和だからねー」


「そうでーす。美和は甘んじて敗北を受け入れなさい。コロンビアのデラックスジャンボパフェ奢りね」


あれか、駅前にある喫茶店コロンビアの看板メニューのデラックスジャンボパフェ。5人前とか書いてあったような。あれって3,000円くらいしなかったかなぁ。確かにあれを奢るのは痛い出費かも。

でもその前に、僕そろそろ帰って良いかな?


「確かにそう言ったけど、そんなぁ」


と悲しそうな顔をしながらそう言った後、何かを思い出したかのように水蓮寺さんは僕をキッと睨んできた。


え、僕が悪いの?

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