4話 蝕む穢れ
少年は悪夢を見ていた。周りからは病原菌扱いを受けて虐められる夢。自殺したかったところを取り押さえられて失敗し、尋問され自分が悪かった事にされる夢。その他様々な夢を見ていた。そして少年は目を覚ました。少年の寝衣にはぐっしゃりと汗がつき気持ちが悪かった。
「はぁはぁまたあの夢か」
もう何度も見た夢。最初のうちは数えていたがもう今では数えても仕方ないと思い途中で数えるのをやめてしまった。いややめてしまったのではない。やめたのだ。数えていても何か現状が変わる訳ではないから。過去が変わる訳ではないから。そう言い訳をしながら逃げていた。起きて着替えをしようとするともう既に時計は8時30分を指していたがそんな事など気にせず寝衣を脱ぎ捨てシャワーを浴びる。何故少年が時間を気にしてないかというともう既に気にする必要がなくなっていたからだ。あの後も少年に対する虐めはよくなるどころか悪化の一方を辿った。結果少年は不登校になってしまい登校時間になっても寝ていて完全に登校を拒否する様になっていた。結果として少年は時間を無視しての行動をする様になり段々と情緒不安定になっていた。更に不登校が続くと今度は家族から何故学校に行かないのかと責められ始めた。少年は必死に虐めの事で悩んでいる事を伝えた。だが両親は理解するどころか真っ向から否定してきた。
「お前の我慢が足りないから悪い」
「お前の努力が足りないから悪い」
「お前の頑張りが足りないのが悪い」
少年の意思を否定して理解せず責め立てる親に嫌気がさした少年の中で何かがプツンと切れる音がした。直後少年は感情を爆発させて周りにあるものを投げつけたり壁を蹴って破壊したり家族に手を出す様になっていた。少年はいつの間にか心の闇に飲み込まれて感情のままに暴れ回る通り魔の様な存在に一瞬にして変貌していた。それから暫くして疲れ果て暴走状態から解放された後今度は自己嫌悪に陥っていた。誰がどう見ても周りの惨状を見れば自分がやった事だとわかったからだ。そして直ぐに自分の部屋に引き篭もり涙を流し続けた。もう嫌だ。自分も家族も学校の連中も皆、皆嫌だ。それからしばらくして病院の精神科を受診した。元から持っていた病の薬に加え精神安定剤を飲む事になった。だけど一向に精神は安定するどころか磨耗して疲れ果てていく日々だった。「もう死にたい」
それが心の声か実際に出た声だったかはわからない。もしかしたら両方の声だったのかもしれない。けどもう生きているのは嫌だ。そう思った時少年の手は自分の飲む薬を入れてるケースに手を伸ばしていた。そして一回にいつもより何倍もの量の薬を摂取していた。そしてそれは次第に悪化していきどんどんと摂取する量が増えてオーバードーズとなり家族のいる前で倒れた。それでも更に薬を飲もうと少年は薬のケースに手を伸ばしていた。直ぐに母親が状況を理解して救急車を呼び病院に入院する事になった。そして皮肉にも助かってしまった。親は安堵した表情を見せていたがそれが自分の事を思っての安堵の表情だとはとても思えなかった。どうせ外面を良くしたいとか病院の人間によく見られたいとかそんな事を考えての安堵の表情なんだろうと少年は思った。もう少年の心はそこまで歪んでしまっていたのだ。因みにこのオーバードーズ、少年はこの後成長した後も何度か繰り返し行う様になっている。そして中学2年の秋、教頭と校長から母親共々呼び出され出席日数が足りない事を告げられた。正直言ってしまえばお前らが対応をまともにしないから虐めが跋扈しその被害に遭い不登校になり出席日数だって足りないのだと思っていたが敢えて口にはしなかった。どうせコイツらも自分の保身の事しか考えてなさそうだと思ったからだ。そして中学3年生から転校する事にした。
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