Day7 あたらよ

 大判焼屋の店主曰く、山車は西の方へ行ったという。それが結構なスピードだったらしく、「歩きだとなかなか追いつけないかもしれませんよ」とのことだった。

「それより法螺吹町で先回りしていた方がいいんじゃないかしら。あそこは法被工房があるから、山車は一度はそこへ寄りますよ。特に今年は曳き手の子どもをずいぶん集めたようだから、きっと法被が足りなくなります」

「そうですか。どうもありがとうございます」

「いえいえ。よかったらこれもどうぞ」

 かくして情報を得た私は、イカ焼き三本とりんご飴三本と巨大な大判焼四つを抱えてしらはえ通りを歩いた。あまりにかさばるので途中のベンチに座り、大判焼からいただいた。美味い。粒あんがみっしり入っている。皮も程よくモチモチして、ほんのりと甘い。夕飯を食べるのを忘れていたので、このボリュームも有難い。

 しかしやはり多い。

 大判焼を食べ、イカ焼きを挟んでりんご飴、しかしまだ大判焼は三つある。捨てていくわけにもいかずに困っていると、突然「やぁ、こんばんは」と声をかけられた。

 友人が立っていた。空っぽのリヤカーを引いている。

「最近は運送の仕事をしているんだ。車両が入っていけない場所にも入れるから、なかなか重宝されているよ」

 友人は誇らしげにそう話す。と、ぎゅううううとすごい音が聞こえた。友人の腹の虫が鳴いたのである。

「よかったら大判焼など食べないか」

「いいの?」

 友人は巨大な大判焼三つとイカ焼き二本とりんご飴二本を、私がのんびりりんご飴を一本食べる間に、きれいに平らげてくれた。

「こんなに奢ってもらって悪いなぁ」

「いや、全部もらいものだから」

「そうは言っても君のものじゃないか」

 お礼にリヤカーに乗せてくれるというので、お言葉に甘えることにした。緩衝材の代わりに積んであった毛布の上に寝転んでみると、見上げた先に星空が見える。さっき子どもたちが修繕した三日月が、やや低いところでしっかりと光っている。

 夜風が吹く。汗ばんだ体が涼しい。リヤカーの音と振動も心地よい。

「いい夜だなぁ」

 思わず声に出すと、友人も「ああ、いい夜だ。明けてしまうのがもったいないような夜だ」と返す。

 リヤカーはそのまましらはえ通りを出て、そこで一度止まった。

「ところで、君んちはどこだっけ?」

 友人がこちらを振り返って尋ねる。

「じつはかくかくしかじか……」

 説明すると、友人は掌犬とハエトリグモの心配をしてくれた。

「ふたりともいいやつだからなぁ。ぜひ取り返していただきたいな」

「ありがとう。法螺吹町に法被工房があるそうだから、そこで待ち伏せようと思うんだ」

「なるほど、では法螺吹町まで乗せていこう。その辺の縁に掴まっててくれ」

 私は急いで友人の言うとおりにした。友人はリヤカーを引いて走り出した。

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