第9話 冒険者にならなくてはならない理由

 結論を話そう、無駄骨だったと言うね。


 まぁあの後アルビオンに居住地を構えようとしたんだけど、案外難しくてね。

 そもそも冒険者登録をしていないと資格が無かったというオチだったわけだ。

 冒険者登録というのが何なのか、俺にはさっぱり分からなかったのだけど、どうやら冒険者はギルドカードなるものを登録しないとなれないらしい。


 全く、面倒事が増えたよ。


 そういうわけで俺は冒険者登録ができる近くの街によることにしたんだが。


 ……驚いたことにそこでもまた、問題が発生したんだ。

『杖』を持っていないことで、魔法使いと認めて貰えなかったのだ。


 それどころか、「貴様、さては魔法使いを騙る不届き者だな?」とか言い出してさ。

 追い出されてしまった訳だよ。


 よって今は、まさかの野宿だ。

 ついてないと言いたいが、幸いなことに一人旅じゃない。

 俺の肩には小さくなった状態のフィサリオが浮遊している。

 この状態だと喋れないらしく、触手でコミュニケーションをとってくるのだが、それもまた良い。


 だがやはり1000年の年月は変化をもたらすようで。

 なんとなく覚えていたはずの土地も、まるで見たことの無い風景を漂わせ、俺の前に立ちはだかってきた。


 例えば、山賊。

 そんなヤツらなど前世の時には見たこと無かったのだが、この時代には溢れかえっているようで。


「……てめぇ、何さっきからぼーっとしてやがる!」

「おかしら、こいつ金持ってそうなオーラしてますぜ?」

「力ずくでむしり取ってやる!!」


 などと随分と頭の悪そうな会話を隠す気もなくしている始末だ。

 俺としてもこの状況はあまりに面倒と言える。

 何故って?そりゃ、決まっているだろう?


 ────死骸の放置なんて面倒事を生み出すに決まっているのだから。


「あのさ、悪いんだけど。俺は死体の処理なんてやりたくないんだよ。すまないんだけど今すぐ立ち去ってくれないかな?それとも、良い死体の処理の仕方を教えてくれるなら頼みたいんだけどさ」


 俺の言葉に数名の山賊は顔を見合せたあと、笑い始めた。


「っ……ぷはははっ!舐めてやがるなこのガキ……俺様をどこの誰だと?」


 中でもいちばん動きのとろそうな奴が無駄にでかい斧を構えてそんな事をいうので。


「いやいや、知らないさ。残念ながら名前なんて基本残らないんだから忘れた方がいいよ。どうせ誰か誰とか歳とったら割とどうでも良くなるしな」


 などと伝えると、山賊のボスと思わしき髭もじゃは。


「なるほど舐めてるにもほどってのがあるんだぜ?俺様の名はアジャス!ここの近くの山を支配する山賊団アジャスターズの頭領だ!」


 ご丁寧に挨拶と、所属と、立場を教えてくれた。

 まぁそんなもの数分で忘れるので、記憶にとどめることすらしない。


「そうか。じゃ、消えてくれ。君たちがいつどこで何をどうしたかなど興味は無い。だからさっさと……まて、そこの男、貴様杖を持っているな?よこせ」


 ふと後ろに目をやると、一人の男が『杖』を持っていた。

 それは見たことが無い形状をしていたものの、魔力の流れを見るに間違いなく『杖』だった。


「なんだこいつ?腹立つなぁ、やっちまえ!!」


 頭領の誰かさんの叫びとともに山賊が数人躍り出る。


 が、そんなもの興味の対象外だ。

 名乗る暇すら与えないで俺は山賊の頭に手を掛けると、そのまま隣のハゲ頭の男に向けて廻す。

 続けて飛び上がって斬りかかってきたやつに関しては、拳を結晶化させてめり込ませて討ち取る。


 そして、おっと危ない。

 クロスボウと呼ばれた懐かしい武器の矢を左手で弾き、そのまま投げ返して心臓に刺す。


 最後に4人ほど彎刀を構えて突っ込んできたヤツらには、直接ストレートアッパーをかました。

 そんなに強くやった覚えは無いが、当たった奴から粉微塵に粉砕されたので、痕跡はあんまり残っていないと思う。


「ひ、ヒィィィィ!!?た、助けてくれ、命だけは……」


 とぼやく奴も、誰だか知らないので容赦なく潰す。

 余談だが俺の拳にまとっている『愚者』の魔力は、あらゆる属性の効果を砕く。

 その効果は人体にももちろん作用する。

 例えば、人体というのは『水』が多く含まれている。これは生存の為に体内に水を貯めておく必要があるからだ。


 だがその水というのは『愚者』の魔力に当てられると、当然破壊されて消えてしまう。

 それから人体はタンパク質やカルシウムで構成されているが、その多くは『土』により再現出来る。それから『水』この2つを利用する事で、人間という生物の基礎は造られた。

 この源流とでも言うべき場所に、『愚者』の魔力を差し込むと、そのシステムがバグり……まぁ要はエラーをおこして爆散するってわけさ。


 このようにね。


 俺は目の前て粉になって消えた山賊の誰かさんに目をやり、それからその近くの誰かさんの持っていた『杖』を手に取る。


 ……すごいなこれは。

 そこにはこの千年間の人類の進歩のレベルの低さが出来ていた。


 見た目はまるで『棒きれ』。杖と言うにはあまりにも無作法で不細工。

 もしも前世の人間が生きていたならば、こんなものを杖とは認めないだろう。


 ……そういえばコイツらは山賊団と言っていた。

 それならアジトがあるだろうし、ちょうどいい。

 そこでひとつ『杖』を作ってみるとしようか。


 _________________________




 久しぶりです。

 熱中症で倒れてました。

 みんなも水分、塩分はこまめにとるんじゃぞ……。


 次の更新はまた少し先です。

 まだ頭痛い……あと寝てたら物語の構想吹っ飛んだ。

 メモしてなかった私が悪いんですけどね……。

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転生賢者は、悪役貴族と蔑まれてもTUEEEE『杖』を作るのにしか興味は無い ちょしゃ猫(旧ペンネーム皆月) @Cataman

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