第4話 海のダンジョン
死屍累々というのだろう。
魔物を倒し、浴びた血肉を飲みくらい、さらに肉を断つ。
既に魔法使いとはかけ離れた戦闘描写になっているが、そんな事を気にする必要は無い。
そもそも前世の頃から俺は魔法を唱えるより殴りかかって倒した方が早いと思っていた。
そんな訳で俺はサクサクサクサクと魔物を引き潰し、踏み越えて走っているという訳だ。
ちなみに服装に関してだが、そこら辺のサーペントタイガーの皮を巻き付けている蛮族スタイルである。
どうせ破けるし、それなら服なんてあんまり要らない。
……そう言えば前世の時も知り合いの狂戦士に言われたな。
「お前、服を着ろ。着ないなら出ていけ、女の子の前で服は着ろ。それとも私はなにか女だと思われてないとかそういう話じゃないだろうな?な?なァ?」
……あいつ元気かな今。
さすがに死んでるとは思うのだが、アイツ普通に生きてそうなんだよなぁ……。
だってミンチになったのに生き返ったからなぁ……バケモンだよあれは。
_________________________
さてしばらく進むと嫌な音が聞こえてきた。
ゴポゴポ……ポゴゴ……
海、というか塩水の香りが漂う。
やっぱりと言うべきか、目の前には洞窟があり、ダンジョンの下層部が水の中に沈んでいた。
なるほどここのダンジョンは水の中……厄介だな。
当然ではあるが、人間というものは水の中で呼吸はできない。
もちろん魔法使いならばそういう魔法をかければ良いが、生憎俺にはそんな便利な魔法は無い。
「……ふーむ、参ったぞ。これは工房には出来ないかもな……」
杖作りはよく爆発するのだが、その衝撃で沈みそうな気がするのだ。
島が沈むことは多分ないが、工房の性質上地下に作るものになるので必然的に水に沈むだろう。
そうなれば杖を作るどころじゃない。
……はぁ。
…………まぁでも探索する必要はあるだろうなぁ。
素材とか、海の中でしか取れない鉱石とかもあるし。
でもどうするのか?
お前は海の中で呼吸できるのか?
そう思う人はいるだろう。
安心してくれ、今の俺にはできない。
なのでこれから海に入って、そこら辺の雑魚から魔石を回収してくることにする。
俺は来た道を戻りつつ、使えそうなアイテムを拾い集め、そうしてダンジョンの出口に到着した。
既に日は暮れ、真っ暗になっていたので、あたりの魔物が活発に動いていたが、俺を見るなり速攻で逃げ出している。
少しだけ悲しい。
_________________________
海の中には魚型の魔物が居る。
そういう奴は大抵水の中で呼吸できるようにする魔石を持っている。
もっとも、無限に呼吸は無理。
まぁとりあえず、で水の中に潜る。
ザパーーン!!
海の中は多数の魔物の生息地だ。
あと基本海を好む魔法使いはいない。理由は、魔力が拡散してしまうからである。
海とはすなわち魔力の溜まりに溜まった場所のこと。
大気に含まれた魔力が集まり、濃縮され、流れ込んだ結果、より濃い魔力となって水に溶け、それにより強い魔物が生まれる。
つまり海とは危険なのだ。
そう、今俺を襲ってくるドラコシャークのように危険な魔物だらけなのだよ。
ドラコシャーク。
サメ型の魔物。特徴は竜並の噛みつき力と、水中で時速130キロにも及ぶ加速力である。
「シャーーーーーク!!!」
目にも止まらぬ速度で体当され、俺の体は水の中を吹っ飛ぶ。
当然だが剣は役に立たない。
そして水の中の魔力が邪魔して魔法すら上手く作ることができない状況。
危機的な場面だ。
……普通ならば。
残念な事に俺は水の中でも問題なく魔法を作れる。
……なんなら、俺はただ『愚者』の魔力を垂れ流すだけで良い。
「シャーーーーーク!!!シャクゥゥ??!!」
はい、この通り。
俺から垂れ流れた魔力はすぐに結晶化し、辺りを漂う障害物とかした。
そして速度を上げて突進してくるドラコシャークは避けることが出来ず、ぐっちゃぐちゃに潰れた。
哀れ。
まぁサメなんでこんなものだ。
俺は倒れたドラコシャークの心臓に手を差し込み、魔石を引き抜く。
そしてそれを口に入れ、飲み込む。
するとすぐに視界が明るくなり、同時に息が急速にできるようになる。
さらに泳ぐ速度が格段に上がっており、先程まで時速100キロだった泳ぎが、既に時速120キロまで出るようになった。
おかげでドラコシャークを追いかけながらヒレを引っこ抜く芸当がすぐにできるようになったのはでかい。
「ごぼぼぼぼぼぼぼぼ、ぼぼぼぼぼぼぼほほ!(さーーーーて、いっぱい狩りますかーーーー!!!)」
_________________________
狩りをしている中で気がついたことがある。
ここの海の魔物は、桁外れに強い。
まずあの後すぐに出会ったのが、『シーハイドラント・ウェルキウス』という名の鯨竜。
全長80メートルの巨体を持つそれが、悠々と泳いでいた。
もちろん狩った。
口の中に入って魔力を流して殺した。
おかげで息がもっと長く続くようになった。
その後『アビスオクトパス』という深海に生息する蛸型の魔物の群れと戦闘になり、真っ黒にされながらたおした。
あとは『シーキング・シーランタン』というなの深海に住むチョウチンアンコウ型の魔物とも戦った。
3000度を超える光を放つので、普通に火傷するかと思った。
こいつを倒したあと、しばらく前が見えなかった程だった。
そしてしばらくすると、先程のダンジョンの最下層と繋がっている場所にたどり着いた。
そこは大きな鳥かごのような石で囲まれており、さらに辺りには無数の魔物の死骸が浮遊している場所だった。
そしてそれは唐突に現れた。
『アビサル・フィサリオ・ファントムロード』
またの名を、亡霊クラゲ。
……一応コイツの危険度を伝えておこう。
海でコイツより強い魔物はいない程度だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます