「強く刺さるが選ぶ作品

あの作品のレビューとしては、
本作は「夜」「超高速」「残像」というモチーフを軸に、
走ることそのものを“生き方”として描いた作品であり、
雰囲気・テーマの一貫性は非常に強い。

特にクライマックスに至るまでの構成は明確で、
• それぞれ異なる立場・年齢・動機を持つ人物が
• 同じ“200マイルの世界”へ引き寄せられ
• 一度きりの極限の時間を共有する

という流れは、ロマンとして完成度が高い。
機械描写や速度域の描き方も具体的で、
「走ることに取り憑かれた人間」の感覚はよく伝わってくる。

一方で、本作は意図的に
現実側の視点(家族・社会・倫理)をほぼ描かない構造を取っており、
そこが評価の分かれ目になる。

特に未成年である健吾の扱いや、
家族から見たときの喪失・断絶については
物語内でほとんどブレーキがかからないため、
読者によっては強い違和感を覚える可能性がある。

また終盤、西岡という「残像を追い続けた象徴的存在」が
比較的穏やかな位置に着地する点については、
テーマの鋭さがやや丸くなった印象も否めない。
クライマックスの覚悟と代償の重さを考えると、
よりシビアな結末であっても成立したのでは、
と感じる読者もいるだろう。

総じて、
世界観と熱量は非常に強いが、
その分、受け入れを読者に委ねる作品である。

夜と速度と残像に共鳴できる読者には深く刺さる一方、
現実との接点を重視する読者には
好みが分かれる仕上がりと言える。

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