第11話 帰り道
「――改めてだけどお疲れさま、
「うん、だいぶ疲れたけどほんとに楽しかった。
「……いや、騙した覚えはないんだけどね。でも、楽しんでもらえたなら良かった」
それから、しばらくして。
両側に田畑の広がる帰り道にて、和やかに(?)そんなやり取りを交わすあたし達。いや騙してたじゃん。あれはデートではないよ。楽しかったけど、たぶんデートではないよ。
ところで、あの後だけど――なんと、手伝ってくれたお礼にと、採れたての茄子をふんだんに使ったお食事まで用意してくれて。……うん、ほんと美味しかった。こう、素材の味を最大限に活かしていて……まあ、語れるほどの立派な味覚なんて持ち合わせてないけども。
「……でも、ほんとに貴重な経験だった。あんなふうに自然にまみれて過ごすのって、もう随分と久しぶりな気がするし……それに、あたし達が普段食べてるものってあんなふうに作られてるんだなって、今日のことで身に沁みて分かったから」
「うん、そうだね葉乃ちゃん。僕も、改めて
その後、ややあってそう伝えてみる。すると、穏やかな声音で答える宵渡さん。……うん、ほんと貴重な経験だった。普段は意識しないことだけど、こうして丹精込めて作物を作ってくれる人達がいるから、あたし達は栄養たっぷりの美味しいものが食べられて……うん、ほんと感謝しなきゃね。
「……はぁ、涼しい。あっ、アイスがほしいなぁ宵渡さん。確かまだあったよね? チョコのやつ」
それから、数十分後。
リビングにて、パタリと仰向けになりそんなことを言うあたし。いや、疲れてるのは彼も一緒だろうし、そもそも自分がほしいなら自分で取りにいけという話ではあるけども……でも、今日くらいは良いよね? 楽しかったし不満はないけど、何も知らされず急に手伝うことになった立場なわけだし……それに、ほら、ちょっとくらい甘えたいし。
「まあ、アイスもいいんだけど――後で、もう一度デートなんてどうかな?」
「……へっ?」
「また少し歩くんだけど、以前からよくお世話になってる素敵な
すると、冷蔵庫には向かわずそう口にする宵渡さん。そんな思いも寄らない返答に、あたしは――
「うん、もちろん! じゃあさっそく行こ!」
「……へっ?」
そう、パッと起き上がり答える。もちろん、まだ疲れてはいる。でも、そういうことなら話は別で。……素敵なカフェで、宵渡さんとデート……ふふっ、楽しみっ。
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