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おぼんにビール瓶とグラスを持って女史が現れました。

「強いんですよね。」

と笑みを浮かべられました。

「つまむものも要りますわね。」

と言ってまた出ていきます。

「こんなものしかないですけど。」

とおっしゃって、ボールのようなものにポテトチップスとかが入れられていたものを持ってきてくださった。


それから2つのグラスにビールを注ぎ、

「再会に乾杯!」

とグラスとグラスを重ねました。

私の手は震えてしまい、いっぱいに注いでいただいたビールが少しこぼれました。


こんな瞬間が待っていたのかと思いますと、さっきまでの不安な自分が嘘のような気がしてまいります。

ビールが乾いた喉にごくっと冷たく通ると、それをきっかけにしたのかでもあるように、涙があふれてまいりました。


「いやねえ、泣かないで。せっかくの再会でしょ。」

と女史はおっしゃって、からのグラスにビールを注いでくださいました。


「すみません。」

グラスを持ったまま深くお辞儀をすると涙がぽたぽた落ちてきて、お宅の絨毯を濡らしてしまいました。

「すみません。」


「変わらないですね。」

顔をあげると、女史が優しく美しく微笑んでいらっしゃいました。


やっとお会いすることができました!


二杯目のビールも喉の奥に飲み込まれていきました。

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