第四十五節 儀の所以

畳に円を描いた夜

思い出される忌みし記憶

部屋に入れば

墨の匂いがまだ残る

儀式の記憶の時のまま

何も変わらない

そこに戻りし

感覚に囚われる

誰にも言わぬ手順を踏み

誰にも見られぬ声で呼んだ


空気が沈むとき

窓の外に壁が現れる

闇の壁が迫り来る

それが視界を覆う時

いつの間にか 部屋が変形し

四方から視線が集まってくる


手順どおり灯を消す

決して振り向いてはならない

軋む音が式を確認する

それは誰でもない存在の拍手



記憶の音と、現実の音

重なり私を苦しめる

耳元で囁かれる

目の前に闇が迫る


儀式は終わったはずだったのに

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る