第四十一節 囁き

闇の裂け目に沈む声

誰も知らぬ名を抱え

骨に刻んだ一節が

風の中、囁きを編む


灯をともすな 名を告げるな

口にするたび 影が増す

指にふれている古い紙

そこにあるのは記憶か

呪いか

もはや誰にもわからない

解明しない

誰一人

じじつより

保身を尊ぶ


一度だけ 言葉にした

眠るはずのあれが微笑み

名前を呼ぶ者



名を呼んではいけない

呼べば名がこちらを見る

名に気づかれぬまま

夜の底で ただ黙って


閉じよ 扉

綴じよ 言葉

名を呼んだその日から

あなたはもう あなたではない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る