第三十八節 闇の中で
ゆるさない――。何度その言葉を呟いただろう。もう、私には分からない。
「人を恨んだら悪いことがあるよ」
数年前、友人が言った言葉が忘れられない。それなら私にはどんな悪いことが待ち受けるのだろうか。
それも、私には分からなかった――。
「つらい」って打ち明けたら、言われた言葉。一生忘れられない。なぜあんなことを言えるのだろうか。なぜ、断言出来るのだろう。
考えても理解できない。彼女は絶望した事がない。
それは分かるが――。
「今日が絶望だとしたら明日は希望があるよ。だから、頑張ろう」
頑張ろう――?私は頑張っているつもりだ。彼女にそんなことを言われるということは、私の努力が足りないということだろうか。
誰が正しいのか。
何が正しいのか。
それすら分からない私は頑張って居ないのだろうか。
もはや、分からない。
明日には希望があると、なぜ言えるのだろう。絶望を味わっていない人間にそれが分かるのだろうか。
明日には希望がある、そう念じていたが――。
盲信が現実になったことは無い。言霊があるというが、希望という言葉は言霊にならなかったのだろうか。
この先に希望がある、と彼女は言うだろう。
だが、信じられない。
言霊。もうそんなこと信じていなかったけれど、わたしはその名を読んだ。
その名の不幸を願った。
翌日、訃報がとびこをんで来た。その名の訃報――彼女の訃報だ。
喜びに沸き立つが、心は依然、闇の中。
光も射し込まない闇の中でどれだけもがけば良いのだろう。
逃れられない。出口もない。光もない。
あとどれ位か、もう分からない。
あとどれ位――――。
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